外国から観光目的などで日本を訪れる訪日外国人を2020年に2000万人にするという国の目標に向けて、訪日外国人の行動をデータ化して人流分析しようという試みが相次いでいる。

 2014年12月12日には、ワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2:東京都中央区)やアクセンチュアが主導する「TRAVEL JAPAN Wi-Fi 」プロジェクトが動き出した。訪日外国人に対して、Wi2などが展開する全国約24万のWi-Fiスポットを実質無料で開放。さらに、訪日外国人にダウンロードしてもらったスマートフォン用アプリ「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」を通じて、Wi-Fi経由で、旅行に役立つ様々な情報のうち、ユーザーの位置情報や時間に基づいて最適と思われるものをアプリに配信する。

 情報を提供するのは、京都市や神戸市、JCB、ドン・キホーテ、日本航空といったプロジェクトに参加する多くの自治体・企業。アプリは英語、簡体中国語、繁体中国語、韓国語、タイ語の5カ国語に対応する。

 情報の利用目的に同意してもらったうえでスマホアプリをダウンロードしてもらうため、同プロジェクトのWi-Fiとアプリを使った訪日外国人については、国籍、性別といった利用者属性と、Wi-Fiスポットへのアクセス情報とGPS(全地球測位システム)からの位置情報を合わせた行動経路が入手できる。

 これらを蓄積して得られたビッグデータを、Wi2とアクセンチュアが2013年に整備した分析プラットフォーム「Ideal Insight」を使って解析し、その結果を参加する自治体・企業にフィードバックする。例えば、「どんな国から来たどんな年代の訪日外国人が、どこに立ち寄り、どのような経路で移動しているかなどが把握できるようになる」(Wi2の大塚浩司社長)という。

訪日外国人がどこから来てどこへ流れていったのかを示したフローダイヤグラム。「Ideal Insight」で作成した
訪日外国人がどこから来てどこへ流れていったのかを示したフローダイヤグラム。「Ideal Insight」で作成した

JTB、JCBも訪日外国人の人流分析へ取り組む

 一足先の12月1日には、JTBとJCBの共同出資会社であるJ&J事業創造(東京都港区)が、ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO:東京都港区)と組んで開発した、訪日外国人向け買い物支援アプリ「ジャパンショッピングApp」のリリースも始まった。

タイ語で表記された「ジャパンショッピングApp」のトップ画面。同アプリは他に英語、簡体中国語、繁体中国語、韓国語の5カ国語に対応している
タイ語で表記された「ジャパンショッピングApp」のトップ画面。同アプリは他に英語、簡体中国語、繁体中国語、韓国語の5カ国語に対応している

 こちらも、TRAVEL JAPAN Wi-Fiプロジェクトと同様、「ジャパンショッピングApp」と連動したWi-Fiアクセスポイント(AP)を国内に整備。そのAPを置いた小売店や飲食店、駅、ホテルなどを、アプリをダウンロードしたスマホを持った訪日外国人が訪れると、店舗で使えるクーポン券や当該エリアを訪れる外国人に役立つFAQ、ホテル周辺の百貨店で催されているバーゲン情報などが、自動的にアプリに配信される仕組みだ。そのうえで、アプリのダウンロード時に登録してもらった会員情報やAPへのアクセス情報、クーポン券などの利用状況といったデータを蓄積して分析し、小売店や飲食店のサービス向上や外国人向け新商品の開発などに役立てる。

 また、同アプリ専用のユニークIDを主にアジア圏の地元旅行代理店に配布し、“お得意様”だけに付与してもらうという策を取る。このため、ユニークIDを付与された客を、日本国内で容易に“富裕層”と識別できるのも特徴だ。

 当初は駅や空港、小売店を中心にWi-FiのAPを整備し、2015年以降は旅館やホテルにWi-Fi接続装置を貸し出すなどの手立てでAPの数を増やす。2015年3月末までに1万拠点が当初の目標だ。「自前のアクセスポイントだけでは展開に限界があるので、いずれはWi-Fi網を全国に抱える大手通信会社と組むことも視野に入れている」とJ&J事業創造・会員マーケティングプロジェクト本部の吉川廣司本部長。訪日外国人に提供する情報は、大丸松坂屋百貨店や三越伊勢丹ホールディングスなどJSTO加盟各社が当初は提供する。

 「アジアで衣料品のバーゲン販売がこれだけ盛んなのは日本だけ。百貨店や専門店で催されているバーゲン情報など、データを分析しながら、主にファッションに関わる情報をタイムリーに送り届け、訪日する外国人に日本で購買してもらう機会を増やしたい」と吉川本部長は狙いを語る。

 観光地としての日本の魅力が広まったことと、急激な円安の影響で、主にアジア圏からの訪日外国人の数は急増している。2013年には訪日外国人の数は史上最高を突破。2014年もその更新が見込まれている状況だ。少子化のため将来の市場縮小が確実視される日本では、こうした訪日外国人を取り込むインバウンドマーケティングの重要性は増すばかり。ビッグデータの活用がその切り札になりそうだ。

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