データ活用で高収益な養豚事業を実現した畜産集団を引っ張るのが、群馬県に本社を置くグローバルピッグファームだ。同社の株主である80農場のうち、経常利益率上位の農場は利益率が20%を超えるという。

出荷頭数と農家戸数の推移
出荷頭数と農家戸数の推移

 養豚生産のグローバルピッグファームグループは1983年の設立以来、右肩上がりの成長を続け、2013年度には出荷頭数が54万頭を超えた。グローバルピッグファームの株主である養豚農場(約80戸)の多くは、高い収益性を誇る。今年度上期(2014年3-8月)は特に高く、分析対象の74戸中、売上高経常利益率が上位10%に該当する7位の農場は利益率23.6%に達している。

2013年度のグループ農場の売上高経常利益率
2013年度のグループ農場の売上高経常利益率

 「農場の業績が軒並みいいのには理由がある。今年は豚肉の単価が高水準で推移しているからだ」と企画開発サービス部の橋本豊課長は説明する。

 ただし、2013年度の実績を見ても、ちょうど中位に位置する75戸中37位の農場は経常利益率4.3%を確保している。収益性が低いイメージがある畜産業界にあって、利益率の高さは目を引く。

 その背景には、各農場の収益向上を図るためのデータ活用がある。食肉用豚を産むための母豚(約2万3000頭)の詳細データや豚の生産データ、同出荷データ、同販売データ(約50万頭)、各農場の財務データなどを丹念に収集し、データベースで一元管理している。データ活用のポイントは、できるだけ高く買ってもらえる豚を効率的に生産することだ。生産、経営、出荷、出荷予測それぞれの成績を分析し、データに基づいた判断を行っている。

全国で同じ品種の豚を生産

 グループの80農場は、北海道から九州まで全国に分散しており、「和豚もちぶた」という同じ品種の豚を生産している。同じ品種なので80農場の経営力を客観的に比較できるメリットがある。生産された豚の出荷は、すべてグローバルピッグファームを通して行う。その結果、どこの農場が高く買ってもらえる豚を効率的に生産して収益を上げているのか、グローバルピッグファームが把握できる仕組みになっている。

 さらに地域ごとに、自分の農場が何番目に位置しているのかが分かるほか、どうすれば収益を高めることができるのか、その手掛かりを知ることができる。

枝肉の重量別の頭数と引き値の関係
枝肉の重量別の頭数と引き値の関係

 右のグラフ(1)は、2013年10月から2014年11月までに出荷した枝肉(頭部や四肢、内臓、尻尾などを取り除いた骨付き肉)の重量と頭数のヒストグラム(棒グラフ)。いわば各農場の成績表に相当する。緑の折れ線グラフは、重量別の引き値の平均を表したもの。引き値とは、商品価値が劣るということで豚肉相場価格から引かれる金額だ。

 例えば、重量のバラツキを示す標準偏差を現状の3.39から目標値の2.64に、平均重量を現状の75.9kgから目標値の77kgに変えたのがシミュレーション後のグラフ(2)だ(黒の折れ線)。これによって、約730万円の売り上げ増が見込める。

 枝肉は、その質によっていくつかの等級に分けられて、それぞれ値段が異なる。一番高く売れる「上物」を増やす目安として、過去のデータから目標値として77kgという数字が算出されている。シミュレーションは各農場で簡単にできる。

 約1300万円の売り上げ増が見込めるExcelによるシミュレーション例もある。この場合、豚の重量バラツキを表す標準偏差を現状の3.97から目標値の3.00に、平均重量を現状の76.9kgから目標値の77.5kgにする。さらに豚の哺乳中事故率を現状の10.33%から目標値の5.0%に、豚の離乳後事故率を現状の4.04%から目標値の2.5%に変えることになる。

 ちなみに、豚の哺乳中事故率は、母豚への種付け(人工受精などによる妊娠)から分娩(出産)を経た子豚が哺乳中に死亡する確率だ。母豚によって踏み殺されてしまう事故があるという。離乳後事故率は、乳離れした後の豚が死亡する確率だ。

 データに基づく改善ポイントに従って各農場で対策を講じるほか、グローバルピッグファームの獣医が各農場にコンサルティングを実施している。目的は収益向上。業績のいい農場がモデルになる。地域単位で高収益な農場のノウハウを学ぶ勉強会も、四半期ごとに開催している。

出荷時期の予測精度は約90%

 さらにデータ活用で豚の出荷予測を行っている。母豚の種付けから分娩まで約115日間かかるという。約2万3000頭の母豚1頭ずつについて、何回の種付けで妊娠したか、分娩で何頭の子豚を出産したか、そのうち死産した豚は何頭かといったデータがある。これらを活用して、それぞれの母豚が何頭の子豚を出産するか予測している。データがない場合は、各農場にいる母豚の平均値を使う。

 分娩で誕生した子豚は母豚の乳を飲んで成長していくが、離乳するまでに子豚が死ぬ確率も過去のデータを基に予測している。子豚は約20日で離乳するが、その時点で出荷できる時期の予測精度は約90%。

 出荷の3カ月前には、何頭の豚を出荷できるか、問屋に連絡して価格交渉を優位に進めているという。出荷の1カ月前には、養豚場の人間が目で確認して出荷時期を把握する。

 現状の課題は、5人の専任部隊に当たらせているデータ入力作業だ。かつて養豚場で携帯端末やタブレットなどの導入を検討したが、紙の表に手書きで情報を書いたほうが現場での閲覧用としても活用できることが分かった。加えてデータの修正や削除などの手間がかかるという懸念から、採用に至っていない。

 現在、紙に入力したものがデジタル情報として保存されるデジタルペン入力を検討中だ。コスト削減で一層の収益向上を目指す。