弘前大学はこのほど、青森県弘前市岩木地区の住民に毎年実施している健康診断の調査項目を600項目へと大幅に増やした。遺伝子検査も追加して、疾患の関係も分析可能にした。世界にも例がないほど網羅的な健康調査のデータとビッグデータの解析技術を活用して、認知症や生活習慣病の予兆の発見と予防法の開発で画期的な成果を出すことを目指す。
弘前大学は岩木地区住民の協力を得て、360項目にも及ぶ健康診断を9年前から進めてきた。毎年、1000人前後の住民がこれに参加。弘前大学はこのデータを分析して得た知識を300本以上の論文で発表した。
この「岩木健康増進プロジェクト」を継続・発展させた研究計画が今年、文部科学省と科学技術振興機構のCOI(センターオブイノベーション)プログラムに選ばれた。これを契機に、今年6月に調査項目のさらなる拡充とビッグデータ技術の活用に踏みだした。
あらゆる可能性を調べる
岩木健康増進プロジェクトを進めてきた弘前大学大学院医学研究科長の中路重之医学博士は、このCOIプロジェクトのデータ分析と従来の方法との違いをこう語る。
「これまでは疾患と関係するだろうと思われる項目との関連を見ていた。これからは非常に幅広いデータを使って、あらゆる可能性を調べてゆく」
ビッグデータを分析するパートナーに選ばれたのがGEヘルスケア・ジャパン。プロジェクト専用のクラウド環境を同社が構築し、弘前大学側で匿名化した住民の健康情報のデータを保管する。複数の診療科にまたがる膨大なデータ項目を時系列で解析するなど、大学の医師には荷が重すぎる大規模なデータ分析を準備している。疾患ごとの予兆因子をつきとめて、個人の病気のリスクレベルを判定するシステムを開発する。
弘前大学はCOIプロジェクトの成果を住民の健康増進に活かす仕組みを作る。例えば、クラウド型のサービス「健康物語」の提供を計画している。ソフト開発は地元のIT企業マルマンコンピュータサービス(青森県弘前市)が担当。COIプロジェクトの成果を活用した利用者の「健康予報」、食事や運動の助言、健康と病気について学ぶコンテンツなどを提供する。
