日立造船はこのほど、データ分析を基にゴミ焼却炉での発電量を最大化する新たなシステム「CoSMoS(コスモス)」を開発し、自社が建設したごみ焼却発電施設の1つに導入した。今後は新規に建設を受注する施設はもちろん、既存の施設についても順次、導入を目指す。

 日立造船は、ごみ焼却発電施設を国内で既に約200件建設し、同社の主力事業の1つと位置付けている。これまでも、自社が建設したごみ焼却発電施設に、温度や酸素、窒素の量を測定するセンサーや炉内の様子を映すカメラを設置。そこから24時間、同社の遠隔監視・運転支援センターにデータを送って、施設が予定通りに運転されているか、故障が起きていないかなどを監視してきた。

 今回のCoSMoSは、施設を監視するだけでなく、発電量を最大にするように施設を管理することを狙う。蓄積したデータを活用しながら、発電に最適の状態でごみが常に燃焼するように安定稼働させることで実現させる。

 環境・エネルギー・プラント本部エンジニアリング統括本部運営ビジネスユニット総合運営プロジェクトグループ長の川端馨氏は、CoSMoSを開発した理由をこう説明する。

炉内の炎
炉内の炎

 「ごみ焼却発電施設は、収集したごみを燃やして得られる蒸気でタービンを回して発電する。しかし、集まってくるごみの量も質も安定していない。ごみの量が少なければ炉の一部でしか高温を発せなくなるし、ごみの量が多すぎれば燃焼不良で温度が下がる。そうならないため、これまでは施設の現場にいる人間が目で監視して微調整していた。これを、データを駆使して自動でできるようにしたのがCoSMoSだ」

遠隔監視・運転支援センター内での画像
遠隔監視・運転支援センター内での画像

 具体的には、炉内を映すカメラを使って燃焼する炎の画像そのものを撮影し、これを同社の遠隔監視・運転支援センターに送ってデータとして大量に蓄積する。そして、大量の炎の画像データを分析し、その中から実際に最適な燃焼状態にある炎の画像を「教師画像」として選定。

 この教師画像と、リアルタイムで送られてくる燃焼施設の炎の画像を照らし合わせて、どこに違いがあるかを判定。その判定に基づいて、ごみの量や送り込む酸素の量、燃焼が不足している時に用いる灯油やガスといった助燃剤の増減をCoSMoSが指示し、センターが施設にリアルタイムで伝えるという仕組みだ。

炎の画像を20万件以上も蓄積

 一般に画像をデータとして識別する際には、その輪郭など際立った部分だけを認識するエッジ抽出という手法を用いる。しかし、CoSMoSの場合は、画像情報をすべて利用し、FCM(ファジィC平均)識別という手法を用いて判定するのが特徴だ。

 ある判定ラインを敷いて、そこを超えた場合は○、超えない場合は×と判定する「二値化」という判定手法や、あるデータを、多数のデータから抽出した複数のパターン、例えばA~Hの8つのパターンと比べた結果、Aであると判定する手法では、「炎のようなあいまいな画像を判定するのには向かない」(川端氏)。

 そこでFCM識別を用い、あらかじめ定めた複数のパターン、例えばA~Hの8つのパターンと比べて、Aの要素が20%、Bの要素が10%、Cの要素が60%、Dの要素が10%というふうに判定するようにした。CoSMoSではこの判定に基づいて、具体的な施策を施設に対して指示できるようになっている。

 もっとも、FCM識別という判定手法で正しい判定を導けるようにするためには、「画像データを大量に蓄積し、システムにどの画像がどのパターンの要素をどれだけ含むかを学習させることが重要になる」(技術開発本部技術研究所精密研究室情報グループ主管研究員の藤吉誠氏)。

 そのため、CoSMoSでは、実際に施設に導入する前に、同施設から送られてくる炎の画像を20万件以上も蓄積した。システムが稼働中の現在も、センターに24時間常駐するベテラン作業員の目で、施設から送られてくる炎の画像が8つのパターンのどれに類似しているかを判定したうえで、データとしてシステムに蓄積を継続。「新たに蓄積された炎の画像のデータを加えて原則、2週間ごとにFCM識別の判定ルールを見直している」(川端氏)という。

効果の割に投資が少なくて済む

 CoSMoSを本格導入したごみ焼却発電施設では、ごみが燃えない時に投入する助燃剤の量が、「従来の5分の1以下になった」(川端氏)という。大まかに言えば、燃焼効率が約5倍になったと言ってよい。またCoSMoSは、炉内カメラを利用するため、ほとんどの施設で新たなセンサーを設置するなどの投資が不要。「教師画像」を定めるためにシステム稼働前に大量の画像データの蓄積こそ必要だが、稼働した後の学習は、センター常駐のベテラン作業員が目で判定するだけなので、特別なソフトウエアや計算は必要ない。

 「効果の高い割に投資が少なくて済む」(川端氏)という利点を訴えた結果、大阪府寝屋川市の焼却発電施設への新規導入が決まった。同施設は2018年から稼働の予定だ。また「2015年中にも(既存施設に)あと1カ所導入する予定で、その後も、順次取り組む」(川端氏)予定だ。

 国内だけではない。実は日立造船は、欧州を中心に200件以上のごみ焼却施設の納入実績があるスイスのイノバを買収して傘下に収めている。今後はイノバが建設するごみ焼却発電施設にも、CoSMoSの導入を図っていく。「センターと施設をネットで結んで、画像認識によって運転を管理・制御していくCoSMoSの仕組みは、言葉の壁も距離の壁も乗り越えやすく、外国でも比較的容易に導入できるはず」と川端氏。日立造船はCoSMoSを武器に、ごみ焼却発電施設事業で世界のナンバーワンを目指す。