誰でも無料で入手可能なオープンデータを活用した、営業利益率50%以上の事業がある。国や自治体など約5500機関の入札・落札情報という分散するオープンデータを1カ所に集約し、簡単に検索できるようにしたサービスだ。100%近い情報の網羅性が高収益を生み出す。※本記事は公開当日に限り、無料公開します。

 「市場で6~7割のシェアを持つことができた決め手は、100%近い情報の網羅性にある」

 国や自治体など約5500に上る公的機関の入札・落札情報検索サービス「NJSS(入札情報速報サービス)」を運営するうるる(東京都中央区)の星知也社長は、同社の強みをこう明かす。

 NJSSのユーザー数は約1400社。高いシェアを確保できた結果として、NJSS事業の営業利益率(共通経費などを配賦する前)は50%を超える。NJSSの事業売上高は4億~5億円。「将来的には20億~30億円まで拡大できる」(星社長)と見込む。

後発ながらシェアを奪っていく

 うるるが入札・落札情報検索サービスに参入したのは2010年。既に4~5社がサービスを提供しており実は後発だった。入札・落札情報は、国や自治体のホームページにアクセスすれば、誰でも無料で入手できる。無料の情報だが、1つひとつホームページにアクセスするには手間暇がかかってしまう。1カ所に集約して手軽に検索できるようにすることで、有料サービスとして成り立っているというわけだ。基本料金は1カ月当たり4万8000円(税別、年間契約で一括払い)。入札・落札の情報を検索できるほか、マッチした案件を毎朝メールで知らせてくれる。

 後発ながらシェアを奪っていくポイントになったのが、網羅性だった。星社長は振り返る。

 「後発ながら、我々が入札・落札情報検索サービス市場に参入しようと思った理由は、既存サービスには網羅性がなかったからだ。入札・落札情報は、見落としてしまったら意味がない。落札情報は1週間でホームページから削除されることもある。網羅性を担保できれば、競合のサービスを上回ることができる」

 入札・落札情報は各発注機関の決められたページから公示されるという認識が一般的だが、「実はそうでない情報もとても沢山ある」(星社長)と言う。「お知らせ」のページや「公募情報」などといった一見すると入札とは関係がなさそうなページからも情報は出ている。

 そのページから出ている入札・落札情報は専門の人間が見れば入札情報と判断できるが、一般の人、ましてプログラムではどの情報が入札情報かの判断は付かない。「競合するサービスは、プログラムを使っているため、うまく収集できないのではないか」と星社長は分析する。また、入札・落札情報をいまだに手書きの文書をPDF化して公示する発注機関も存在する。その結果、競合のサービスではすべてを把握できていなかった。

網羅性を実現するための工夫

 そこで、うるるは既に自社で確立していた、ネットワークを介して様々な仕事をこなす在宅ワーカーである「クラウドワーカー」の組織「シュフティ」を活用した。シュフティの登録者数は現在約8万人。テープ起こしや様々な入力などの事務作業をこなしている。NJSS事業では、シュフティに登録しているクラウドワーカーのうち、上位約130人を活用している。

 約5500機関について、130人のクラウドワーカーが手分けして国や自治体のホームページにアクセスして、入札・落札情報を見て、新規案件などをコピペ(コピー&ペースト)している。

 入札情報の場合は最大15、落札情報の場合は最大13項目。週3回、自分が受け持つ国や自治体のホームページにアクセスして、新しい案件がないかどうか、チェックする。月間収入は平均4万円程度。中には30万円を超えるクラウドワーカーが1~2人存在するという。

 うるるには、クラウドワーカーの仕事をチェックする4~5人のチームがある。抜き打ちで、正確に入力しているか、新規案件を漏らしていないか、チェックしてランク付けしている。仕事ぶりが悪いワーカーはNJSSの仕事から外される。このことが「100%の網羅性」を目指す、NJSSの強みを支えている。

国や自治体の入札・落札情報検索サービス「NJSS」の仕組み(資料提供:うるる)
国や自治体の入札・落札情報検索サービス「NJSS」の仕組み(資料提供:うるる)
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