主食や副菜、汁などの300万件以上のレシピといった“料理ビッグデータ”から、利用者の食べ物の好みやダイエット希望、その日の気分など様々な条件に合わせて作成した献立を提案するサービス「Ohganic(オーガニック)」が利用者数を伸ばしている。

「Ohganic」のスマホアプリ
「Ohganic」のスマホアプリ

 実はこのサービス、半導体製造装置メーカーの東京エレクトロン傘下にあって半導体やストレージ製品などを扱ってきた技術商社、東京エレクトロンデバイス(横浜市)の新規事業だ。昨年8月にWebサイト上でサービスを開始して以来、集客活動をほぼ展開してこなかったが、今年8月、毎朝4種の異なる献立をスマートフォン用アプリに配信する「今日のおすすめ献立プッシュ配信サービス」を始めたこともあり、ここへきてアプリのダウンロード数が伸び、約8万に達している。

 利用者が徐々に増えているのは、「利用者に満足してもらえる適切な献立を提案できているから」(CN事業統括本部CN事業推進室アプリケーションサービス企画グループの神本光敬氏)。その秘密は、ビッグデータの活用と独特のアルゴリズムの採用にある。

 東京エレクトロンデバイスでは、個人に最適化した献立を提案するに当たって、献立を構成する個々の料理(レシピ)の中身をデータ化し、「レシピDNA」として整備することにまず力を注いだ。約300万件に及ぶ単品の料理1つひとつについて、調理にかかる時間やコスト、含まれる栄養素、食材の分量、味、調理方法、季節に合う・合わない、朝・昼・夕食への向き・不向き、見た目の色合い、歯応え(料理の硬さ)など数十以上の項目をデータベース化したのだ。

 次いでユーザーに、調理するたびに変動することのない定数として、性別、身長・体重、アレルギー反応を起こす食材、嫌いな食材、カロリー設定、献立を作る際の上限調理時間などを「健康情報」と位置付けてアプリに入力してもらう。さらに、「今日はこんな料理を食べたい」「冷蔵庫の中にひき肉が余っているからこれを使いたい」といった変数も、必要なら「目的要望」としてアプリに入力してもらう。

 すると、同社がストレージやデータベースのビジネスで培ってきた高速データ処理システムが、レシピDNAを参照しながら、これらの健康情報と目的要望を組み合わせ、その利用者に最適な献立を提供するというわけだ。献立の数は計算上膨大なものになるが、実際に提供しているのは今のところ約5000種類くらいだという。

「ラフ集合」手法でレコメンデーション

 その際、一般的なレコメンデーションでよく用いられる協調フィルタリングやアソシエーション分析などの手法を使わず、「ラフ集合」という手法を使っているところがミソだ。

 「食事の場合、『これが食べたい』『これを作りたい』というユーザーの要望は短期間に変化するし、しかも『たまには変わったものを食べたい』といってそれまでの傾向にはなかった献立を好む場合もある。これらに対応するには、対象となる集合の特徴を粗く、ラフに把握できるラフ集合の考え方が適している」と、アプリケーションサービス企画グループITストラテジストの成田隆慶氏はその理由を語る。もちろん、ユーザーがアプリに入力したログやプッシュ配信した献立情報のログなども蓄積しておき、その後の献立選びに反映させる。

 具体的な献立の提案はこんな具合だ。身長・体重の値から肥満度を示す指数BMI(ボディマス指数)を算出。標準体重を目指すのか、ダイエットをするのか、現状を維持するのかなどのカロリー設定に従い、必要なカロリーと栄養素の摂取目標量を弾き出す。そのうえで、「今日はパスタを食べたい」「冷蔵庫に舞茸が余っている」などの要望を聞き、「舞茸を使った塩味パスタとかぼちゃのポタージュスープ、グリーンサラダ」や「トマトクリーム味パスタとじゃがいもの冷製スープ、舞茸とレタスのサラダ」などの献立を提案するのだ。

 ユーザーは、毎朝プッシュ配信されてくる献立の中からその日の朝・昼・夕食の献立を選んでもよいし、その日の要望を入力するとリアルタイム処理でアプリなどに示される別の献立を選ぶこともできる。

 Ohganicは、アプリもWebサービスも現在、無料で提供しており、東京エレクトロンデバイスにとってまだ収益源にはなっていない。同社では今後、アプリ内への広告配信や、医療機関やダイエットトレーニングを提供する企業などへの献立提供サービスなどを展開し、収益化を図る。加えて、「Ohganicで培ったデータ処理のフレームワークやシステムを他業界へ転用することも目指す」(神本氏)と言う。

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