「企業のデータ活用実態調査」特集の第2回は、開発部門とサポート部門のデータ活用の実態を探る。富士フイルムホールディングス傘下の富士ゼロックスは、今回の調査で販売部門に次いで成果を出しにくいとされる開発部門で、データ活用の成果を出している。

【開発部門】顧客の声を商品開発に反映、富士ゼロックス

 製品やサービスに対する年間15万件にもおよぶ顧客の声(ボイス・オブ・カスタマー、VOC)のデータを全社で共有し活用する仕組みを、新製品の開発に生かしているのだ。事業部門の最前線でデータを直接分析する仕組みが、競争力のある製品の早期投入につながっている。

 富士ゼロックスが現在のVOCのシステムを導入したのは2012年。電話や電子メール、ファクシミリ、Webサイト、顧客満足度調査、それに富士ゼロックスの担当者が顧客を訪問したり、顧客が来社したりした際のコメントなど、すべてのデータを集約するものだ。

 データは他部門と共有すると一層効果を発揮する。下表のように、例えば生産部門のデータは70.9%の企業で経営企画・事業計画部門と共有されていることが日経ビッグデータ調査から明らかになった。サポート部門のデータは営業と共有される比率が高い。

自部門以外で分析したデータの集計結果(グラフやレポートなど)または ローデータを活用している部門(複数回答)
自部門以外で分析したデータの集計結果(グラフやレポートなど)または ローデータを活用している部門(複数回答)

 VOCの情報も営業やサポート部門が活用するのが一般的だが、同社では開発部門が積極的に活用している。製品開発をマネジメントしている商品開発本部システム企画部の大泉政浩部長は「実際に開発している担当者が、データを自分なりの切り口で分析することで、顧客が何を求めているのかピンと来る」と言う。

「お褒めの言葉」で仮説を検証

 こうしたデータから、「開発者が、稼働時の騒音を抑えたり、人感センサーを装備したりといった機能の必要性に気付き、早い段階から企画に盛り込めた」(CS品質本部品質保証部の福井淳チーム長)。人感センサーは、スリープモードに入っていても、人が近づいてきたことを察知していち早く復帰する機能だ。顧客からプリントの待ち時間が少なくて済むと好評だという。

 VOCは顧客の苦情の声を集めて改善活動に使うのが一般的であるが、新システムでは顧客の「お褒めの言葉」も登録することにした。約15万件のVOCのうちおよそ1割がお褒めの言葉だという。「VOCを開発者が見ているので、実際に企画した製品が受け入れられているのかどうかを確認できる。いわば仮説と検証を可能にするための仕組みである」(大泉部長)。

 VOCのデータ分析機能は、社員であれば登録するだけで使えるが、新システムでは活用してもらうために様々な工夫を凝らしている。

 例えば、それぞれの社員が任意に設定したキーワードに合致した内容が登録されたら、お知らせメールを送付する。各社員が分析作業を繰り返し効率良くできるよう、設定した検索のキーワードを保存しておく機能も今夏までに実装した。

 VOCは「省エネ」や「節電」のように同じ項目を別の言葉で表現していることが多々ある。このため常に類義語辞書を見直したり、機械学習によって不要なキーワードを除外したりするなどの最適化を図っている。

 富士ゼロックスの場合、品質保証部がVOCのデータを全社で生かす組織となっている。IT部門や外部のITベンダーと連携しながら、システムを構築・運用している。

富士ゼロックスのVOC検索システムの画面
富士ゼロックスのVOC検索システムの画面
[画像のクリックで拡大表示]

【サポート部門】データで安全と効率を両立、日本航空

 安全確保のために、ねじ1つの紛失も許されない─。日本航空は、そんな整備工場の現場でデータ活用を推進している。

 飛行機を安全かつ定時に運航するための部品を管理したり調達したりしているのが部品サービスセンターだ。同センターは社内外のデータ活用を進めることで、安全とコストのバランスの最適化を図っている。同社内においては、飛行機を整備してまた送り出す部品の調達に責任を持つ「生産部門」に相当する。

 同センターがデータ活用を本格化させたきっかけは、整備業務にERP(統合基幹業務システム)パッケージを導入したことだった。2008年に独SAPのERPを導入し、整備の部品に関わるデータも集約した。ただしERPに登録されているデータは膨大なため、「どのデータをどう活用するのかを見いだし、分析に習熟するまで1~2年を要した」(JALエンジニアリングの部品サービスセンター羽田部品計画グループの滝澤京平グループ長)という。

整備部品の在庫を2割以上圧縮

部品の在庫点数を2割以上削減したJALの整備工場
部品の在庫点数を2割以上削減したJALの整備工場

 データ分析を進めた結果、羽田空港と成田空港における部品の消費状況が詳細に分かるようになり、部品の在庫計画を精緻に立てられるようになった。部品点数の多い大型旅客機ボーイング747の運航停止という要因もあったが、年々効果が上がって全体で2~3割の在庫圧縮効果につながった。

 しかも、在庫水準を切り下げながら、現場から要求された際に該当する部品を提供できるかどうかのサービス率は、98%と1ポイント減にとどめた。世界の航空会社のサービス率は一般に92~93%とされている。また、回転率から見ると、従来は70~80%だったが現在は100%を超えるようになったという。つまり平均して在庫にあるすべての部品が1年間で使われるという計算だ。

 滝澤グループ長配下のグループ約10人の全員がExcelのマクロを駆使したデータ分析のスキルを身につけて、これらの成果を出すべくデータと格闘している。

 こうした仕組みを支えるため、Excelのマクロなどに詳しい担当者1人を、グループ内に専任の位置付けで配置している。マクロの作成や修正だけでなく、各担当者が欲しいデータを準備したり、IT部門との連携をしたりしている。また、月次の業務改善会議や朝のミーティングなどにおいて、各担当者が自らのデータ活用について発表し、情報共有や意見交換も行っている。「膨大なデータから改善に使えるデータを見いだす発想力が重要」(滝澤グループ長)。

 コスト面では部品の適正発注にもデータを活用し始めている。部品は世界中の企業から購買しているが「中には法外な値付けをしているところもある」(滝澤グループ長)。このため「過去の発注情報を蓄積し、分析して、部品の価格交渉をより有利に進めるようにしている」(同)。現在、そうした部品の価格情報を提供している企業からデータ提供を受けて、交渉をより優位に進めることができるかどうか検証しているところだという。