中堅食品スーパーのいなげやが4年前に導入したID-POSに基づく分析が成果を発揮し始めた。今夏は「塩飴ブーム」の継続を3カ月前に予測し、売り場展開を強化した結果、大きく売り上げを伸ばした。

 2014年3月期の連結売上高は2304億1100万円で全国10位の中堅食品スーパーいなげや。消費税率が5%から8%に引き上げられた今年4月は既存店売上高が対前年比96.6%と落ち込んだが、5月以降は前年を3~4%上回り、善戦している。8月は前年比105.6%と、好調だった。

 昨年8月は、既存店の売上高が前年比99.3%。梅雨明け直後にお菓子とパン類の売り上げが落ち込み、全体の足を引っ張ってプラスにできなかった。ところが今年は、お菓子とパン類が売り上げ増に貢献。中でも塩飴関連商品の販売量が大きく伸び、8月のキャンディ売上高は前年比102%とプラスになった。 

飴関連商品は梅雨明け以降に販売数が急増した
飴関連商品は梅雨明け以降に販売数が急増した

 販売量が最も急激に伸びた商品はカバヤ食品の「塩分チャージタブレッツ」。7月22日の梅雨明け後、2014年第29週のキャンディの中で最も多く売れた(下のグラフ)。2番目に売れたのは春日井製菓の「塩あめ」。3番目は森永製菓の「ウイダーinタブレット塩分プラス」だった。

 単価が変わらず(特売商品でなく)前週よりも1.5倍以上売れている「突発異常値商品の一覧」という商品リストには梅雨明け直後、飲料・冷やし麺などがランクインしているが、その中で最も伸長したのが塩飴関連商品だった。2014年第29週の菓子部門は前年に比べて売り上げが11.8%伸長し、そのうちの1.36%をキャンディ類が担っていた。単品でも「塩飴」「塩分補給」「機能性」が上位を占めた。

 実は今回販売が伸びた塩飴関連商品はいずれも、熱中症対策として事前に立てた商品計画の中の重点商品群。商品計画のベースになっているのが、年間52週それぞれの3カ月前に作成するマスタープランだ。

自社でデータ分析、プラン作成

 塩飴の販売が急増するまでの流れを詳しく見ていこう。マスタープランには、夏の暑さ対策・熱中症対策として「水分(フルーツ)」と「塩分」の補給が重要だと明確に記述している。フルーツを塩水にくぐらせるスイーツ「ローイゲーオ」、飲料では「ソルティライチ」、酒類では「ソルティドッグ」などを仕入れるべき商品の一例として挙げている。

 過去のID-POSデータから、フルーツとして「なし」や「ぶどう」、「もも」、「すいか」、「メロン」といった売れ筋商品を表示している。熱中症対策の1つである塩分の補給として需要増が期待できる、塩飴についても触れている。

 20年来データ活用に取り組んできた、いなげや執行役員の菅宮佳幸・営業戦略室長は「年52週、1週間単位で営業戦略を練って、どんな商品を仕入れて売り場でどう売ったらいいか、検討している。その時に重要になるのがマスタープラン。商品部や販促の部隊と協議して作成している。他社と違って自社でデータ分析してマスタープランを手掛けることができるのが当社の強みだ」と菅宮氏は胸を張る。

 4年前にID-POSを導入したことによって、併売(バスケット)分析などができるようになり、データ分析の質が上がってきた。とりわけ今年になってデータ活用による成果が出始めてきたという。マスタープランの作成に当たっては、ID-POSデータを基にした併売分析や分類別売上増減分析、単品時間帯販売点数分析、店別分類前年比順位(ランク)分析、地域性分析に加えて、最新のトレンドや天候情報などを加味している。

 当該週の1カ月前から2週間前にかけては、マスタープランのテーマ(夏の暑さ・熱中症対策)に沿って、各商品部門が何を売り込む商品とするか、併売データなどを見ながら関連商品として売れるものは何か、といったことを考える。今回、一般食品部門の熱中症対策では、売り場展開情報として既に、カバヤの塩分チャージタブレッツや森永のウイダーinタブレット塩分プラス、春日井の塩あめの展開指示を出している。いずれも梅雨明け後に販売が急増したキャンディのベスト3だ。

 3週間前の水曜日午前に開くSP(セールスプロモーション)会議で、商品計画が決まる。SP会議には、営業戦略室や販促部、商品部などから総勢約30人が参加する。

昨年の梅雨明け後に売れた商品を提示し、店舗に注意喚起する(指示書の一部)
昨年の梅雨明け後に売れた商品を提示し、店舗に注意喚起する(指示書の一部)

 そして2週間前には、商品部から店舗の部門担当者に指示書が出る。例えば、「梅雨明け注意」というタイトルの指示書には、過去のデータから「キャンディは前週の37位→3位まで躍進する」「カバヤの塩分チャージタブレッツは前週の4倍の売り上げになる」「定番展開している塩飴も2.5倍程度になる」「この週のキャンディベスト10のうち9品は塩飴」といった注意を喚起する文章が並ぶ。

 商品の85%以上を各店舗が発注するいなげやとしては、こうした指示書は重要な役割を果たしている。機会損失にならないように十分な量を発注して商品を並べた結果、梅雨明け直後に需要が急増した塩飴の品切れを阻止して、昨年は落ち込んだ菓子部門の売り上げを押し上げた。

数多くある成功事例の1つ

 「塩飴の大量販売は、数多くある商品施策の1つの成功事例にすぎない。こうした成功事例は他にもたくさんあり、その積み上げによって売り上げを作っている。データ分析によって、お客様が欲しい時に、欲しい商品が売り場にしっかり展開されているかどうかが重要なポイントだ。やるべきことを緻密にやっていれば、必然的に対象商品の売り上げは増える」と菅宮執行役員は話す。

 商品開発や商品構成、商品計画、販売計画、数量計画は、データ分析が生きるプロセス。ただ食品スーパーはそれだけでは顧客を呼び込めない。店舗フォーマットを顧客の生活スタイルに合わせる必要がある。

 そこでいなげやは、135店舗ほどある既存店については、毎年50店舗程度の改装を実施している。2~3年で全店を改装していることになる。「店舗改装の効果は確実に売り上げ増につながる」(菅宮氏)と言う。さらに新店舗の開発だ。昨年は下石神井店(600坪タイプ)や白金台店(300坪タイプ)など5店の新店を出した。こうしていなげやに対する顧客の支持を拡大させて、2014年度は増収増益を狙う。

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