アディダスジャパン(東京都港区)が、センサーを活用したサッカーボールやウエアラブル端末による新規事業を強化している。グッズやウエアを売り切るだけでなく、収集したデータに基づくトレーニングアドバイスを無償で提供し、顧客の囲い込みを狙う。

 9月1日、充電池と加速度センサーを内蔵したサッカーボール「マイコーチ スマートボール」を発売した。同社直販EC(電子商取引)サイトでの販売価格は3万5640円。ユーザーが蹴ると、ボールと接触したキックポイント、スピード、与えられた回転数と回転方向などを自動的に計測。ボールのIDを登録した専用アプリに、近距離無線技術のBluetoothでデータを送って表示する仕組みだ。アプリはiPhoneなどのiOSに対応している。

「マイコーチ スマートボール」のアプリ画面
「マイコーチ スマートボール」のアプリ画面
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 例えば、プロ選手のプレーをまねることができる。フリーキックでゴールを狙ったりロングパスを蹴ったりする練習の時、著名なプロサッカー選手が蹴ったボールの動きのデータと、自分が蹴ったデータを比較し、修正を重ねられる。

 これまで“感覚”に頼りがちだったが「この強さで、この方向に、これだけの回転をかける」といった具体的なデータを持ちこみ「スキルの早期向上を目指す」(アディダスジャパンマーケティング事業本部Football/Rugby/miビジネスユニット カテゴリーマーケティング シニアマネージャーの山下崇氏)。

 アディダスジャパンがこの事業に力を入れる背景には、アスリートがよりよい結果を求め続けてきた結果、「グッズやウエアの開発だけではニーズに応えられなくなってきた」(山下氏)という事情がある。そこで、アスリートの動きや心拍数などをデータ化してトレーニングの領域にまで踏み込んだ。アディダスというブランドへのロイヤルティを高め、それをグッズやウエアの売り上げ増につなげる考えだ。

横浜F・マリノスが導入、次は高校の部活

 2011年12月には「miCoach(マイコーチ)」というサブブランドで、アスリートの走行距離やスピードなどを測定するデバイス「マイコーチ セル」(6900円から)を発売。2013年11月には、チーム全員のこれらの動きを同時に計測してデータを示すシステム「マイコーチ エリート」、2014年8月には心拍数などを計測できる腕時計型デバイス「マイコーチ フィット スマート」(2万4840円)を発売し、ラインナップを拡充中。

 日本でも、Jリーグの横浜F・マリノスや流通経済大学サッカー部がマイコーチ エリートを導入している。こうしたチームのほかに、ランニングやサッカー、ラグビー、テニスなどを楽しむアスリート個人に売り込みを図っている。

 特に意識しているのが高校の運動部である。なぜなら「育成時期で適切なフィジカルトレーニングが必要にもかかわらず、専門のコーチがほとんどいない」(山下氏)から。miCoachによってフィジカルコーチ不在の課題解消を訴え、同社製品の高校生への浸透とブランドロイヤルティ向上を狙う。

 次の課題は「デバイスで蓄積するデータを分析したり比較したりして、どうすれば適切な強化につながるのかをアスリートやチームにアドバイスすること」と山下氏。そのためにもmiCoachシリーズを普及させて、データを蓄積することが欠かせない。これらのアドバイスのサービスについては、アディダスジャパン自身が、有識者の協力を得て蓄積したデータを分析し、競技やチーム事情に合わせた強化策を打ち出す考え。無料で提供して、miCoachやグッズ、ウエアを長期的に使ってもらうことで収益を確保する計画だ。