物流大手独DHLグループの日本法人、DHLサプライチェーン(東京都品川区)は、物流の拠点の作業をセンサーを利用して改善している。超音波を利用して作業員の動き方をデータ化。分析したうえでレイアウトを変更し、作業時間の削減やスペースの有効活用につなげた。

 運び入れた荷物を再度送り出す物流倉庫において改善を行った。倉庫で働く各作業員に超音波発信機(タグ)を装着し、音波を倉庫の天井に設置した受信機で受信する。音波は複数の受信機でキャッチし、3点測量の仕組みで場所を割り出している。

 受信器を3.5m間隔で約60個セットすることで、床面積約509.6平方m(150坪)までの倉庫をカバー可能であり「誤差約30cmで、20人の作業員の動きを測定できる」(オペレーションエクセレンス デュプティマネージャーの小林祐一氏)。RFIDやWi-Fiを使ってテストもしたが、RFIDでは広い倉庫内で電波が届きにくく、Wi-Fiは測定の精度が低かったという。

歩行距離が長く、空間効率も悪いのが判明

 今年6月までの上期に取り組んだのは、8人の作業員が働く床面積約260平方m(80坪)の倉庫。データを約1カ月間毎日測定した結果、8人合わせた1日の歩行距離41.8km、1人当たりの歩行時間は平均で1日1.7時間と、同様の商品を扱う倉庫に比べると歩行距離が長く、運搬作業が多く発生していることが分かった。また、作業員の動線や滞在エリアを分析すると、2つある作業机のうち1つの稼働率が極端に低かった。仮置き場の位置が悪いことから、迂回して出荷口に直接運ぶことを強いられていることも判明した。

作業員8人がある1日の16:00~17:00にどう動いたかを示す動線図
作業員8人がある1日の16:00~17:00にどう動いたかを示す動線図

 さらに作業スペースの利用効率を把握するため、出荷ゾーンの中を梱包や検査、伝票の発行や貼り付けを行う「付加価値エリア」と、単に移動に費やす「非付加価値エリア」に分けて分析した。作業員8人の1日の総滞在時間53.7時間のうち、非付加価値エリアでの滞在時間が22.2時間にも上ること、非付加価値エリアに相当する床面積が全体の7割に相当する180平方mに達することが分かった。

 ムダな作業机などを撤去し、作業員の動線を考えてレイアウトを大幅に変更するなどで改善。作業工程が短くなり、1回のオーダー(出荷作業)当たりの運搬時間が39秒から12秒に短縮し「月換算で作業時間が約15%減った」(小林氏)。レイアウト変更では作業スペースをそれまでより約33%もカットし、空きスペースを他の商品の保管スペースに転用した。

 DHLサプライチェーンはレイアウト改善など解決策の事例を蓄積したうえで、他社の倉庫の作業効率化を請け負う新規事業として立ち上げることを目指す。

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