セコムのCEOの役割を担う前田修司会長は「今年4月から二十数社の経営トップと頻繁に会い、これからの社会に求められるコンソーシアムの設立に動いている」と明かす。2014年度中には、複数社でビッグデータを活用した新サービスの提供に乗り出す。

 セコムは顧客の最前線に配置するセンサーだけでなく、データ活用の基盤となるセンターなどの設備にも機動的な投資を続けている。

 「システムを止めない仕組みとデータを守っていく仕組みを確立していった」とセコムトラストシステムズ常務の藤川春久情報セキュリティサービス本部本部長は話す。大事なデータを守ることができなければ、安心・安全を事業としている同社の存在意義はないからだ。

自前センターでノウハウ蓄積

 ITへの投資も早かった。75年には、世界初のコンピュータを活用した安全管理システムCSS(コンピュータセキュリティシステム)を確立している。委託先の異常情報をコンピュータで一元管理するようにして、管制卓に「異常情報の発生時刻」や「異常情報の内容」「契約先の情報」を自動的に表示するようにした。ここでオンラインのセキュリティシステムの基盤が完成した。

2010年に設立した「セキュアデータセンター」新館。震度7の地震に耐えられ、自家発電機などの装備を備える
2010年に設立した「セキュアデータセンター」新館。震度7の地震に耐えられ、自家発電機などの装備を備える

 そして98年7月には、日本初の画像センサー利用のオンライン画像監視システム「セコムAX」を投入した。収集するデータが飛躍的に増加したのもこの頃だ。本格的なデータセンターの必要性を痛感し2000年に「セキュアデータセンター」を開設。自ら集めたデータを確実に守る体制を敷いたのだ。

 最近のサイバー攻撃は高度化しており通常のウイルス対策が通用しなくなりつつある。セコムグループでも月間2000件のサイバー攻撃を受けているという。「このため100%攻撃を察知して回避する方法を確立している」(藤川本部長)と言う。例えば、パケットを次から次へと送られるような攻撃に対しては発信元を遮断する措置を取り、正常なアクセスを維持している。

 こうした自社のサイバーセキュリティのノウハウを、顧客企業の現場での対応にも生かす。75人で組織するサイバー消防団があり、顧客がサイバー攻撃の被害に遭うと、すぐに駆けつけて対処している。何が起きているのか、なぜ攻撃されたのかといった実態を調査している。

コンソーシアムで社会課題に挑む

 顧客に提供するサービスありきで、ビッグデータを収集し活用する体制を素早い判断で確立してきたセコム。ここにきて新たな段階に入ろうとしている。

 これまでセコムのグループ約20社で、セキュリティ、防災BCP、医療・介護の3つの分野で自前のサービスを開発し展開してきた。セコムのCEO(最高経営責任者)の役割を担う前田会長は「今後は他社との提携でサービス開発を進める。今年4月から二十数社の経営トップと頻繁に会い、これからの社会に求められるサービスを追求するコンソーシアムの設立に動いている」と明かす。このコンソーシアムの第1弾が、2014年度中にも始まろうとしている。

 東京の閑静な住宅街である杉並区久我山地区。ここでセコムをはじめ、コンビニエンスストアや運輸会社、娯楽企業、情報サービス企業、介護企業などが参加して、ビッグデータを活用した、新サービスの提供に乗り出す。同地区には、セコムが運営する病院や介護施設、薬局がある。

 急速に進む高齢化社会に求められるサービスの開発を目的とする「久我山モデル」である。

 前田会長は「久我山地区に住んでいる65歳以上の方が安心・安全、快適・便利に楽しく元気に過ごせるようなサービスを考えて実現に動く。セコムだけでは対応できない『健康維持や生きがい』『おいしいもの』『さらに便利なサービス』が必要になることが明確になったので、他社との提携に踏み切った」と説明する。

「センサー+人」を横展開

 セコムの得意とするビジネスモデルもフルに活用する。

 セコムは2015年、久我山地区での活用を想定する高齢者向けの、リストバンド型ウエアラブル端末を商品化する。これを装着している人が倒れたことを重力センサーで検知できるのだ。危険検知だけでなく、消費カロリーの計算も行い、3年後に静脈の情報を測定できるようにする。

 ただし情報を検知しただけでは、不安を解消したり命を守ったりはできない。前出の災害情報のセンターに続く、医療・介護サービスの中核拠点として「セコムメディカルセンター」を設立する。

 メディカルセンターはセコムの医療サービスのエンジンでもある。センターに問い合わせれば、看護師や専門医のアドバイスを受けることができる。例えば、夜中、ある病院に脳疾患の急患が運び込まれ、たまたま宿直の医者が整形外科専門だったとしても、メディカルセンターに連絡して脳外科の専門医による支援が受けられるようにするという。

ビッグデータ時代躍進の条件

 久我山モデルでどんなサービスが生まれてくるかが注目されるが、それ以上にセコムが外部企業とのコンソーシアムの結成に動き出したことは意義がある。ビッグデータ時代には、自社のデータだけでなく、他社のデータや外部のオープンデータを駆使できない企業は競争力を落として、淘汰されかねない。これはすでに欧米で起こりつつあることだ。

 仮になくてはならないサービスを思いついたとしても、それを具現化できなければ絵に描いた餅である。逆に他社を巻き込んで実現していく底力を持っていれば、社会のニーズに応え、企業として成長できる。

 ビッグデータ時代に躍進する重要なポイントであり、その意味でセコムはビッグデータ時代に躍進する最右翼の企業と言える。

 セコムの強さがどこにあるか。それを因数分解すれば、今後日本企業がビッグデータで競争力を向上させていく条件にたどり着く。それが、右に示した「ビッグデータ時代に躍進する企業の条件」だ。

 もっともこの条件は、現段階での仮説と言える。東京オリンピックが開催される2020年までには、それが正しかったかどうかの結果が分かるだろう。

この記事をいいね!する