セコムの「リアルタイム災害情報サービス」は独自の情報網に加えて、Twitterへの投稿なども加味していち早く災害情報を把握する。今後は、航空画像や地理情報など様々な空間情報のデータも掛け合わせ、いち早く災害の前兆を察知して自治体などへ通報するサービスの実現も目指す。

 セコム独特の「仕事の流儀」を実現したBCP支援のビッグデータサービスに「リアルタイム災害情報サービス」がある。

 地震や豪雨、火災などの災害情報を、気象庁や自治体、ネットなどから入手。その情報の信ぴょう性を緊急対処員の現地確認や独自に入手した情報で確かめたうえで、避難が必要な住民や対応を求められる企業などの顧客に配信する。

 災害が多発する日本。セコム独自の情報網だけでは状況を把握できない限界も見えてきた。そこで外部のデータも取り入れ、セコム流の分析を加えて確度を担保するというものだ。

SNSの情報も掛け合わせ判断

 リアルタイム災害情報サービスは昨年9月に開始したが、今年2月にはTwitterなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での書き込み情報などを活用した災害情報の把握に乗り出した。

 これらのビッグデータを活用した確認を24時間365日行っているのが「セコムあんしん情報センター」である。例えば次のようなプロセスで情報の確認と配信を行う。

 まずセンターで、気象庁による「X市の降水量は100ミリ」との発表を受信し、SNSのTwitterでは「(X市の)Y交差点が浸水」「Y交差点が通れない」といった書き込みを情報としてキャッチ。その後も情報が時々刻々と増えていく。

 例えば、同社の安否確認サービスを利用している顧客が、「Y交差点が浸水で通行不可」という安否報告のメールを送ってくるとする。

 ここで過去の情報で正確性が高いと判断した人が「Y交差点が浸水で通れない」とTwitterに書き込むと、最終的に緊急情報の配信を判断する。この時点で、十分な情報量かつ信頼度の高い情報が一定数という条件を満たしたわけだ。

 Twitterの情報を活用するに当たっては、東日本大震災でつぶやかれた書き込み情報を解析している。発生した災害に対して、現地の人がどうつぶやくのかを検証し、不要な情報を省けるようにした。

 もちろん全国2830カ所の緊急発進拠点に待機している緊急対処員が現場を確認すれば、緊急情報の発信を即座に判断する。ここがセコムの強みでもある。

「セコムあんしん情報センター」におけるリアルタイムの情報分析の流れ
「セコムあんしん情報センター」におけるリアルタイムの情報分析の流れ

予測で危険を回避する

 緊急情報の配信先特定にもビッグデータを活用する。災害の発生を確認できたら配信すべきエリアを特定。そのエリアに関連する顧客を、事前の自宅や勤務先などの登録情報だけでなく、「過去6時間以内に警備システムなどのカード操作」「スマートフォンのアプリによる位置情報」などでもひも付ける。

 今年8月20日未明に広島市の安佐南区で発生した土砂崩れは、避難勧告が出る1時間以上前に発生してしまった。こうした事態をなくすことはできないのか。

 セコムの技術開発本部の進藤健輔本部長兼開発センター長は「将来的に土砂崩れの前兆をいち早く察知して自治体に通報して避難勧告を出すタイミングに役立ててもらえるようレベルアップに取り組んでいる」と説明する。

 前述のリアルタイム災害情報サービスに、さらに航空画像や地理情報など様々な空間情報のデータを掛け合わせ、地域全体の今の状況を把握する。そうすれば「前兆の察知は十分に可能だ」(進藤センター長)。

 こうした高度な予測を行うための空間情報に関する研究は、画像認識やセンシングなどと共に、セコムのIS研究所が取り組んでいる。セコム常務執行役員の小松崎常夫IS研究所所長は「社会課題の解決には超一流の技術が必要であるが、まずはサービスありき。それを実現する技術が何かという発想で取り組んでいる。130人弱の研究所員には、社会的に見て正しいことを大事にしろと伝えている」と話す。

自社の事業継続のために開発

 セコム自身の事業継続が実現できなければ、他社を支援することなどできない。そのことを、「阪神淡路大震災の時に痛感した」と、セコムトラストシステムズ専務で営業開発本部の鈴木徹也本部長は話す。

 こうした経験から開発したのが、携帯電話やPCへのメールを使って従業員の安否を確認するサービスだ。顧客の使い勝手を考え抜くセコムらしいサービスだ。

 同サービスを2012年10月から順次導入した日本精工のコーポレート経営本部危機管理推進室の鵜飼正彦室長は「ユーザーが実際に直面する状況を理解したなかでの的確なサービスだ」と高く評価する。

 日本精工は以前、セコムとは違う会社の安否確認サービスを利用していたが、東日本大震災で全く機能しなかったという苦い経験を持っていた。大きな余震が起きるたびに安否確認メールが送信され事業者側のシステムがパンクしてしまったのだ。

 セコムの安否確認サービスは東日本大震災の時も機能していた。メールを自動で配信せず、必ず人が介在し判断するプロセスを入れている。

サービス進化のため機器をレンタル

 セコムは、顧客の警備のために大量のセンサーなどのデータを収集している。そうしたデータを活用して、リアルタイム災害情報のような新たなサービスを開発し、「データ+人」で活用してきたわけだが、その精神は創業時から貫かれてきたものだ。

 1962年創業のセコム(当時は日本警備保障)は、会社設立4年後の66年に日本初のオンライン安全システム「SPアラーム」を開発し、サービスを開始した。契約先に防犯・防災センサーを取り付け、通信回線を通してセコムのコントロールセンターが24時間遠隔監視し、異常が発生したら緊急対処員が駆けつけるというサービスだ。

 異常情報をキャッチした場合、家庭であれば、電話をかけてまず確認する。そのうえで対応を考える。留守宅であれば、まず緊急対処員が駆けつけて家の外周をチェックし、場合によって預かっている鍵で中に入って確認作業に取りかかる。

 ここでポイントになるのが、契約先に取り付けた防犯・防災センサーをレンタルにしていることだ。創業者の飯田亮取締役最高顧問は警備のための機器類をレンタルにするか、売り切りにするか迷った末に、前者を選んだ。

 当時、欧米では売り切りが主流だった。しかし、飯田最高顧問は機器を売るのではなく、警備サービスを提供するのが仕事だと考えた。機器を売れば、その代金が入り資金繰り上メリットがあるが、機器が古くなったり壊れたりすれば、顧客に買い替えてもらう必要がある。故障してもなかなか買い替えてもらえないと、サービスを継続できない。

 レンタルの場合は、セコムの判断で機器を新しくできるため警備サービスを止めることはない。常に最新の機器を導入することでサービスの質を改善できる。実際、セコムの技術開発本部では、センサー類や監視カメラといった機器の開発に取り組んでおり、コストを見ながら順次最新の機器に入れ替えてセンシングの質を高めている。

サービス開発を中心としたセコムの創業からの歩み
サービス開発を中心としたセコムの創業からの歩み
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