6月28日、圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の相模原愛川ICと高尾山IC間が開通し、東名高速、中央高速、関越道が圏央道でつながった。これによって交通の流れがどう変わったかを調べた国土交通省関東地方整備局相武国道事務所は、カーナビのプローブデータを調査方法の1つとして採用した。
データを提供したのはナビタイムジャパン(東京都港区)。同社にとってカーナビから得られるプローブデータの活用がビジネスとして実を結んだ最初のケースとなった。今回の調査で国土交通省がプローブデータに求めたのは圏央道と並行する国道16号などの移動所要時間のデータだ。入札の結果、ナビタイムジャパンが選ばれた。
2000年設立の同社は、徒歩を含めた「ドアからドアまで」のきめ細かな経路探索サービスに強い。携帯カーナビを含めた有料サービスの利用者が400万人に達している。
携帯カーナビのサービスを開始したのは2004年。利用者の合意のもとにカーナビのプローブデータの収集を始めたのは2010年からだ。渋滞情報を充実させ、ナビの品質を高めることが目的だった。
2012年、自治体や法人向けの交通コンサルティング事業に進出。社内に蓄積された時刻表データ、プローブデータ、経路検索といった膨大な交通データを売り物になる「価値」に変えるという課題に取り組んだ。
最初はたった2人のチームから始まった。建設コンサルタント会社などと連携してニーズを探りつつ、「交通問題の解決のための分析パターンを整えてきた」(交通コンサルティング事業チーフエンジニアの太田恒平氏)。それらを学会や研究会などで発表し、活用方法を提案するといった努力を重ねた。
その結果2013年には交通コンサルティング事業に関する問い合わせが60件を超え、今は技術者と営業担当者の合計で6人のチームに成長した。
交通の流れの変化が一目瞭然
下図は圏央道の一部開通の1年前と開通後で東名を出て関越に入る車両の交通がどう変化したかをプローブデータで調べたもの。図の帯は交通量の相対的な多さを表す。帯に沿って記入された数字は計測した全台数を100として、その場所を通過した台数の割合だ。図のnの値はサンプル数である。

この図を見れば、都心を経由して東名から関越に入る車両が激減したことが一目瞭然だ。移動にかかる時間の変化も容易に把握できる。
既に社内にあるデータだけで、1年前との比較ができる。同社は今後、いっそう大きな分析プロジェクトに取り組み、事業を発展させる考えだ。