東京電力は7月末、消費者向けとしては初となるビッグデータを活用したサービスの提供を始めた。

 サービス名称は「でんき家計簿」。オンラインで電気料金を確認できる無料のサービスとして2012年に開始しており、各家庭が近隣の似た家庭と比べることができるビッグデータを活用した機能を今回投入した。「顧客に電気料金の値上げをお願いしており、省エネで少しでもその影響を緩和することができれば」(カスタマーサービス・カンパニー営業部暮らしのプラットフォーム構築グループ四ツ柳尚子マネージャー)との狙いがある。

東京電力の「でんき家計簿」のサービス画面
東京電力の「でんき家計簿」のサービス画面

 9月に100万件と年初の3倍の契約を達成できる見通しで、2016年度中に1000万件を目指す。

米オーパワーとの提携で実現

住居などの詳細情報を登録することで、より適切な比較が可能となる
住居などの詳細情報を登録することで、より適切な比較が可能となる

 ビッグデータ活用は、電力利用の最適化支援のノウハウを持つ米オーパワーとの提携で実現した。

 顧客は2段階で自分の家庭の状況を把握できる。登録直後は住所や契約アンペアなどの基本的な情報を基にして周囲の100人のうち、「省エネが上手な家庭」「平均的な家庭」と比べることができる。ログイン後にコンテンツを利用していると、「家の構造」「家族構成」といった顧客ごとの情報が求められ、それを入力することで周囲の「似た家庭」100世帯との比較が可能となる。

 省エネが不十分な場合は、「炊飯器の保温時間を短くする」「旧型の冷蔵庫を買い換える」など助言をする。

 東電は今年2月、こうしたビッグデータ活用サービスを検討する組織「暮らしのプラットフォーム構築グループ」を立ち上げた。同グループにはWebサービス、家電やリフォーム、データを活用したマーケティングに詳しい担当者などが在籍、技術開発センターのデータサイエンティストと連携しながらサービスを開発している。

 東電が米企業のオーパワーと提携してサービスの投入を急ぐ背景には、事業の競争環境の変化がある。

 東電は2015年初頭から順次、各家庭の電力使用を30分から1時間単位で把握できるスマートメーターを導入する。1日に数回、電力の利用状況を取得して、より精緻なデータ分析が可能となる。今後、異業種が家庭の電力事業に参入する「自由化」が見込まれる。東電には脅威であるが、東電側の規制も緩和される見通しで「新たなサービス展開のチャンス」(四ツ柳マネージャー)と見ている。

 例えば、省エネが不十分な家庭にポイントを発行することで省エネを促すといったことが想定される。現在は料金が認可制のため、事実上の割り引きサービスを自由に提供できない。住居に応じたリフォームを提案することも可能だろう。各家庭とつながるでんき家計簿は、こうした新しい取り組みのインターフェースとなっていく。

 データ提供も検討中だ。居住エリアや家族構成などの属性別に、電気利用状況、家電保有状況といったデータを統計的に処理して提供。外部企業がマーケティングに、自治体が政策の立案に利用することができる。

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