通信機能を備えたクルマや産業機器、都心の流通店舗や最新の公共インフラなどにセンサーが組み込まれ、リアルタイムIoTへの先進的な取り組みが始まった。一方で、我々の毎日の生活にもリアルタイムIoTを実現するセンサーが入り込み始めている。

【回収サービス×IoT】満杯の寸前で必ず回収、利幅の薄い地方でビジネスを成立

 四国の地場スーパー「フレッシュバリュー」の三島店。駐車場の脇に、新聞紙や雑誌を投入する大きな回収箱がある。スーパーの買い物客向けに、資源事業者の松本光春商店(香川県高松市)が設置したものだ。資源ゴミの日でなくてもいつでもゴミを出すことができるため1日当たり約30人が利用するという。市町村によっては古新聞などの資源ゴミの回収が月に1回というところもあり重宝がられているという。

 ここでは回収箱の容量がいっぱいになりそうになると、すぐに松本光春商店の回収トラックがやって来る。そして空の回収箱を下ろし、満杯の回収箱を持って行く。

IoTを活用した回収事業の流れ
IoTを活用した回収事業の流れ

 考案したのが、松本光春商店も出資するエコグリーン(香川県高松市)とITベンチャーのえむぼま(愛媛県松山市)だ。この仕組みを支えているのが回収箱の底に据え付けた重量センサーである。携帯電話網を活用した機器間通信の定額サービスの普及を後押ししている。

 現在の重量を計測し、リアルタイムでセンター側に送信している。それをエコグリーン側で監視していて、適切なタイミングで回収に行く。複数のスーパーに置いた回収箱を合わせて、制限重量まで回収することも可能だ。

 古紙回収のサービスは年々利幅が圧縮されている状況下で、ビジネスを支えるのが回収箱のIoT化である。「四国は平均して回収センターから設置場所までの距離があるので、回収に行ったけどあまり量がないと、人件費や燃料のムダになる。逆に積みすぎて過積載になると、取り締まりで高い罰金を支払うことになる」(エコグリーンの金沢康秀代表取締役)。

 顧客を店舗に呼び込む仕組みとして、ポイント制度がある。顧客が1kgの古紙を入れると、エコグリーンの負担で1円相当のポイントを付与する。同時に店舗側にもエコグリーンから場所代相当として1円を払っている。

不正利用を即時チェック

 こうすることで顧客と店舗の満足度を上げているわけだが、前述の通り利幅が薄い。新聞紙を何度も出し入れしたり、回収箱の中に人が入るなどして重量を水増しするような不正行為があると収益的に厳しくなる。そこでこうした挙動を不正と見なし、リアルタイムにポイントを無効にするなどの対策をしている。利用者ごとのポイント付与状況を一定期間でチェックすることでも不正をあぶり出している。

 IoTの動向に詳しい東京大学先端科学技術研究センターの森川博之教授は「資源などの回収サービスとIoTの親和性は高い。安価に普及し始めたセンサーを活用することで、コスト面から不可能と思っていたビジネスモデルが可能になることがある」と指摘する。

【室内センサー×IoT】センサー自身が行動を学習、身の回りの機器を統率

ネストのサーモスタットやセンサー
ネストのサーモスタットやセンサー

 IoT関連で今最も注目を集めている企業の1社が、自動温度調節装置であるサーモスタットを手がける米ネスト・ラボである。今年に入って、米グーグルが約3200億円で買収したからだ。「単なるサーモスタットのメーカーになぜ」と世界が驚いた。

 日本ではサーモスタットを使うセントラルヒーティングは少数だが、同社の買収劇とその後の動きを見ることでリアルタイムIoTの方向性が見えてくる。

優秀な“家政婦さん”となるしかけ

 グーグルがネストに3200億円分もの価値を認めたのが、サーモスタットに組み込んだ機械学習の機能である。

 具体的にはサーモスタットを何度に設定して、その後何度に調整したのか、何時に空調をつけるのか、照明を消すのかといった、生活パターンそのものを学習する。つまり、家庭内のユーザーがどのような生活パターンで行動しているのかを学習する。そうしたデータを積み重ねることで、優秀な“家政婦さん”のような役割を担おうとしている。

 6月には、自動車メーカーのダイムラー、家電のワールプール、照明のLIFX、リストバンド型端末のジョウボーンなどと、連携サービスを発表した。ネストが同時に公開したソフトウエアを活用して連携を実現した。

ネストのサーモスタットやセンサーとの連携を2014年6月末に公表した企業とその内容
ネストのサーモスタットやセンサーとの連携を2014年6月末に公表した企業とその内容

 例えば、ダイムラーとはクルマが家に近づいたら室内の温度を快適と感じる状態に調整することを実現。また、煙センサーで異常を検知したらLIFXの照明を、赤色などに点滅させて警告することを可能にする。

 日本のお家芸とも言える白物家電ではあるが、こうした幅広い業界を巻き込んだ連携に対抗していくのは不得意であり、容易ではない。

 ネストは米アップルで携帯音楽プレーヤー「iPod」のソフトウエアを担当していたエンジニアが起業した会社でもあり、極力ボタンを排しているなどユーザーインターフェースが優れている。生活シーンに溶け込んでいくこうした工夫も、日本企業が見習う点ではないだろうか。

 資金力も豊富だ。ネストは6月に家庭用の監視カメラを手がける米ドロップカムを約550億円買収し、家庭内の状況をどん欲に把握しようとしている。

毎年1兆のセンサーが増える時代

 地球上に毎年1兆個ものセンサーが普及する「トリリオン・センサー」。米フェアチャイルドセミコンダクター、米カリフォルニア大学バークレー校などの産学協同プロジェクトは2013年夏、世界人口70億人が1人当たり150個のセンサーを毎年消費していくという2020年の未来の姿を描いた。

 まさにリアルタイムIoTの取り組みを加速する動きであり、流通し蓄積するセンサーなどのデータが急増していくのは必至だ。こうしたデータから意味のある情報を取り出すには、大量のセンサーデータを即時に処理し、複数データを効果的に掛け合わせて意味を見いだす、といった技術が必須となる。これまで大量かつ処理が複雑なため即時の処理が難しく、あきらめていたようなデータも使えるようになってくる。

 リアルタイムIoTに各産業や国、学術機関が取り組みを始め、ビッグデータが新たな価値を生み出す挑戦の時を迎えている。

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