筑波大発のベンチャー企業、BearTail(茨城県つくば市)のスマートフォン向け無料家計簿アプリ「Dr.Wallet」が、順調にユーザーを増やしている。昨年8月のリリースから10カ月で、iOS版、Android版を合わせ、50万ダウンロードを突破した。

Dr.Walletの画面
Dr.Walletの画面

 既に100万ダウンロードを突破した無料家計簿アプリ「ReceReco」や「Zaim」と同様、ユーザーは飲食店や小売店などで受け取ったレシートをスマートフォンで撮影するだけ。するとOCR(文字認識技術)によってレシート内の文字や数字が読み取られ、クラウド上に送られて記録され、アプリに金額などが表示される。

 BearTail社長兼CEOの黒崎賢一氏はアプリ開発の目的について、「多くのユーザーのリアルな店舗での購買履歴というビッグデータを、いち早く集めたかった」と説明する。家計簿アプリを通してユーザーのレシートを丸ごと入手できれば、小売店とは無関係に、そのユーザーのリアルな店舗での購買履歴をほぼ完全に把握できる。そうしたデータから購買動向の分析レポートなど様々なサービスを展開しようというわけだ。

 まず8月からは、ユーザーの購買履歴に基づいた商品推薦を始める。広告ではないため収益には貢献しないが、的確な情報を提供することでユーザーの信頼を得るのが狙いだ。

 第1弾はクレジットカード。例えばあるコンビニエンスストアでの買い物が多いユーザーに対し、そのコンビニのハウスカードを推奨。同時に、そのユーザーの購買履歴を踏まえ、「カードを切り替えると年○○円得になる」ことも示す。今後は他の商品にも範囲を広げていく予定だ。

 メーカーとタイアップしてマストバイキャンペーンも展開する。メーカー指定商品をアプリ上で推奨し、購入を証明するレシートを送ったユーザーには、そのユーザー向きのクーポンやポイントなどを付与する。「キャンペーンである商品を買ったユーザーが、その後も同じ商品を買い続けるかどうか、これまでは追うのが難しかった。私たちは購買履歴が分かるので、それも追える」と、黒崎氏は強みを強調する。

文字認識率99.98%の訳

 競合アプリが多い中、いかにユーザーを獲得するのか。Dr.Walletの売りは、「99.98%」(黒崎氏)というレシート読み取り精度の高さだ。競合の多くは、システム開発会社のアイエスピーが提供するOCR解析エンジンを利用する。これに対してDr.Walletは、学習機能を持つ独自のOCR解析エンジンを開発。かつ約500人のオペレーターによる手入力で誤りを補正する。データ登録まで多少時間はかかるが、「ユーザーが文字や金額を修正する必要はほとんどない」(黒崎氏)。

 黒崎氏が人件費をかけても読み取り精度の向上に力を入れたのには、理由がある。アプリを長期間使ってもらい、分析に資するデータを確実に集めたいからだ。「レシートの読み取り精度が低く、ユーザーが金額や商品名を自分で何度も直していたら、最後はアプリを使わなくなってしまう。それではDr.Walletを開発した意味がない」(黒崎氏)。

 収益化への試みも始める一方で、BearTailはこの読み取り精度を武器にまずはアプリの普及を優先。長期間の購買履歴が分かるプラットフォームとして育てる。今年度中に100万、2015年度中に300万のダウンロードを目標とする。