山崎製パンは、大量の受注情報というビッグデータを活用して製品廃棄ロスを約4割削減した。全20工場のうち15工場で、受注情報を受け取ってすぐ、リアルタイムに参照できるようにしたからだ。20工場すべてで対応すれば、製品廃棄ロスの約5割を削減できるという。

 「ビッグデータ活用によって山崎製パンの工場は生産性が高まる。そのキーポイントは『リアルタイム化』にある」。山崎製パンの執行役員計算センター室長、石毛幾雄氏はこう話す。

 例えば、人気商品「ランチパック」の製造工程で、生産性を高めるうえで必要なデータを既に収集している。ランチパックは、2枚の食パンで具材を挟み、耳を切り落とした菓子パン。専用の食パンをスライスしてから包装されるまですべて自動で行われ、1分40秒で出来上がる。2枚の食パンで具材を挟む際、画像認識技術を使ってピタリと合わせているという。「将来は、この画像データを使って、何個のランチパックを作ったか分かるようになり、生産量をリアルタイムで把握できる。そのうえ、パンを挟む機械が故障する前に修理することもできるようになる」と石毛氏は展望を語る。

5大ビッグデータ活用プロジェクト

 実は山崎製パンは、ビッグデータを活用するための主な取り組みとして5つのプロジェクトを計画し、既にいくつかを実行している。5つのプロジェクトとは、
(1)ビッグデータ(リアルタイムの受注情報)を一元管理して製品廃棄ロスを削減する
(2)配送ルートを最適化する
(3)グループ内の小売データを活用して新製品を開発する
(4)生産工場を最適化する
(5)POS(情報時点情報管理)データを活用して小売店舗(デイリーヤマザキ)の運営力を向上させる
──がそうだ。冒頭に紹介したランチパックの話は(4)に含まれ、実現はこれからの話だ。

山崎製パンはビッグデータ関連の5つのプロジェクトを企画し、順次取り組む
山崎製パンはビッグデータ関連の5つのプロジェクトを企画し、順次取り組む

 石毛氏の言う「リアルタイム化」をまず実現して、既に成果を上げつつあるのは、(1)の製品廃棄ロスの削減だ。

 実はこれまでの同社の受発注システムには大きな問題があった。工場ごとにホストコンピュータがあって、それぞれに受発注システムが動いていた。このため、基本的に受注生産の体制を取っているのに、すべての受注情報をリアルタイムで把握できず、一部で予測して生産せざるを得なかった。

 例えば、AチェーンのA店舗からの発注情報はまず一旦計算機センターに送られ、そこからAチェーンのA店舗を主に担当する山崎製パンのA工場に届けられる。この発注情報の多くはA工場で生産するパンについてのものだが、中にはA店舗のために別の工場が生産するパンへの発注情報も含まれる。そこでA工場は自工場で生産しない分については各工場に再度、A店舗の発注情報を送り直していた。それぞれの工場は、他の工場からの情報が揃わないと、完全な発注情報を得られない仕組みだったのだ。

 特に、PB(プライベートブランド)製品などチェーンオリジナルのパンを生産する場合、この仕組みが問題になった。PB製品は全国にある20工場のうち、どれか1つの工場で作ると決めている。PB製品は、品質に対する要求が強く、複数の工場で作ると品質のバラツキが起こる懸念があるからだ。

 すると、例えばB工場でAチェーンのPB製品(例えば、あんぱん)を生産している場合、A工場やC工場、D工場などからこのPB製品の受注情報がすべて送られてこないと、生産すべき数量が分からない。とはいえ、すべての情報が揃ってから生産を始めると納期に間に合わないので、ある程度、数を予測して生産していた。そのために、作り過ぎてロスを出していたわけだ。

 そこで山崎製パンは一昨年6月、将来のビッグデータ活用に向けて統合基幹システムをSOA(サービス志向アーキテクチャー)基盤上に刷新した。これまで各工場の業務に応じて別々に設計されていた受注、発注、物流、売上・請求システムを、データの属性や処理の流れなどプロセスから整理。会社として全データの一元管理・利用を目指している。

 その結果、国内20工場のうち、現時点で15工場について、1日数百万件に及ぶリアルタイムの受注情報というビッグデータを一元管理できるようになった。ある工場の受注情報を、受け取ったタイミングで、他の工場からでもリアルタイムに参照できるため、予測に頼らず、受注した数量だけを生産できる割合が増えて、製品廃棄ロスを約4割も減らすことに成功したのだ。今年中に20工場すべてに対応する計画で、そうなると製品廃棄ロスの約5割を削減できるようになるという。

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