ビッグデータ活用の最先端を行く医療・ヘルスケア分野の事例に学ぶ特集の第2回。ヘルスケア分野では、レセプトデータや健康診断の統計データの活用も進んでいる。100万人分のデータを活用して、個人向けの新しいヘルスケアサービスを広めようとしているのがウエルネスデータだ。

検査の信頼性はどれほどか

 遺伝子検査サービス専業のジーンクエスト(東京都文京区)は、利用者に検査結果を返す時、現在の研究の信頼度を推定できるようにしている。検査結果は利用者のマイページで表示する。ここで発症リスクの根拠としてジーンクエストが使用した文献を明記し、その文献のデータの信頼性を星の数で示すのだ。アジア系の人を対象とした研究があるかどうかといった情報も伝える。

ジーンクエストは検査結果でデータの信頼性を星印で示す
ジーンクエストは検査結果でデータの信頼性を星印で示す

 今後、遺伝子と病気や体質の研究が進み信頼性の高い文献がさらに登場すれば、利用者のマイページの情報も更新される。研究論文という“オープンデータ”を生かして、サービスの価値を高めている。

 ジーンクエストは東大の分子生物学の研究者が昨年6月に設立した会社で、今年1月にサービスを開始したばかりだ。一般向けの遺伝子検査サービスとしては日本で最も包括的な約200個の検査項目をカバーしている。検査料は4万9800円だ。

 同社の高橋祥子社長は起業の理由について、「大学の中で研究をするだけでなく、一般の人たちに情報を伝えたかった」と語る。この事業に取り組むことは、「研究にとっても確実にプラス」(高橋社長)。

 ヤフーのHealthData Labの先行モニターの調査で遺伝子検査を担当しているのはジーンクエストである。ただ、検査サービスで提供される内容は異なる。

“100万人データ”で健康増進

 ヘルスケア分野では遺伝子検査以外にも、大きな変化が起きている。100万人分のレセプトデータや健康診断の統計データを利用して、個人向けの新しいヘルスケアサービスを広めようとしているのがウエルネスデータ(東京都千代田区)だ。

 健康診断の検査結果を受け取っても、いろいろな健診値の意味が理解できないまま、ほったらかしにしている人も多いのではないだろうか。

 同社の個人向けの無料オンライン健康管理サービス「wellcan」は、自分の健康診断の結果を入力すると、同年代の人たちの健康データの分布の中で自分がどこに位置しているのかが分かる。

 血糖値のような健診結果のデータが「異常」の区分に入ってしまうと、特定の病気の発症率が10倍以上にも跳ね上がるといった事実が一目瞭然だ。これは健診データとレセプトデータ内の診療内容が関連づけられた統計データを利用するから分かることである。統計データを提供したのは、レセプト分析サービスの日本医療データセンター(東京都港区)だ。

 ウエルネスデータはwellcanを法人向けにカスタマイズした有料サービス「健康ナビゲーター」を今年1月から提供している。初期費用は50万円(500人分の1年間の利用者アカウントを含む)から。フィットネスクラブ向けや、人間ドック向けがある。

フィットネスクラブのパレット中川(横浜市)。100万人の健康統計データや健康診断の情報を会員とトレーナーが共有する(Photo by Tsutomu SUYAMA)
フィットネスクラブのパレット中川(横浜市)。100万人の健康統計データや健康診断の情報を会員とトレーナーが共有する(Photo by Tsutomu SUYAMA)

 右の写真は健康ナビゲーターを導入している横浜市のフィットネスクラブのパレット中川の風景だ。会員が入力した健康診断のデータをパレット中川のトレーナーが確認し、運動メニューを話し合う。「会員とトレーナーがデータを共有して、効果が出ていることをお互いに確認しながら運動を継続していく」(樋口吉史マネージャー)ことが狙いだ。

 パレット中川は診療所とも提携している。会員の入会時にその人の運動リスクをしっかり把握し、安全度の高い運動メニューを提供する「メディカルフィットネス」という考え方を取り入れている。

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