ヤマハは、高級電子ピアノなどを生産するヤマハミュージックエレクトロニクス(静岡県磐田市)で、生産プロセスの「見える化」を進めている。既に基板実装工程など一部に関しては、リアルタイムに生産現場のデータを把握・分析できるようになった。

 2013年3月、基板実装工程に米アップルの「iPad」を利用したPOP(Point Of Production:生産時点情報管理)システムが稼働した。POPシステムは、生産現場にあるiPadで、作業中断の理由や不良の原因などのデータを収集する仕組み。「作業をしながら手軽に入力できる」と、システムの導入に携わったヤマハ楽器・音響生産本部生産企画部IT推進グループの宮田智史主事は話す。

 具体的には、作業員が不良を発見した場合、iPad画面から不良分類(部品ズレ、欠品など)と部位分類(抵抗、コンデンサーなど)のそれぞれを選択すればいい。選択式なので入力しやすく、入力ミスを防げる。

 作業が中断した時も同様だ。中断理由のテンプレートが表示されるので、不良修正や修理、自工程トラブルなどから選択すればいい。

 こうして現場で入力したデータは、入力のたびにSQLサーバーに飛んでいく。日報からExcelへ入力していた月間80時間の作業の削減につながった。さらに、ウイングアーク1stの情報活用ダッシュボード「MotionBoard」で自動的に週報が作られる。その結果、月間44時間の報告書作成時間の削減につながった。

生産工程の不良品発見や作業中断などをiPadに記録していく
生産工程の不良品発見や作業中断などをiPadに記録していく

間接作業費を年間1000万円削減

 POPシステム未導入の工程では、現場作業者の日報(手書き)を基に「Web日報システム(パソコン)」で日報を作成している。以前はExcelに入力していたが、一部の工程でPOPシステムを導入した同じ時期に他の工程では、ExcelからWeb日報システムに切り替えた。こうした取り組みによって、年間の間接作業経費1000万円が削減できたという。

 「今後2~3年で全工程をPOPシステムに移行していく」(宮田主事)と言う。既にプラスチック成型の工程にPOPシステムを導入しており、次にはアセンブリー(組み立て)工程に導入する。

 POPシステムやWeb日報システム、MotionBoard の導入によって、生産性が落ちた原因をたどることができるようになった。基板実装の工程では、250度まで上がった装置を150度まで冷ます「立ち下げ」がある。この立ち下げが増えると、非作業時間が増加する。その原因を調べることで改善策を考えて実行し、ここ1年で非作業時間を3~4割削減できた。

 ヤマハミュージックエレクトロニクスは以前、ヤマハ楽器・音響生産本部エレクトロニクス生産統括部豊岡生産部だったが、今年4月1日、ヤマハの100%子会社として独立した。「豊岡生産部時代より、売り上げや利益といった経営指標を重視するようになった」と宮田主事は解説する。当面の経営目標は生産現場のデータを分析してより抜本的な生産の改革に着手することだ。そのために、データを分析できる人材の確保を検討中だ。

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