将来、居眠り運転がなくなり、悲惨な事故が減るかもしれない──。そんな期待を抱かせる商品が開発された。世界初、「自分を見る」メガネ型端末「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」だ。ジェイアイエヌ(JINS)が来年春の発売を予定している。

 「自分を見る」とはどういうことか。このメガネにはセンサーが埋め込まれており、装着した人の視線の動きや瞬きを常時センシングできる。眼の動きから疲れや眠気、喜怒哀楽などが分かるという。

 運転手にジンズ・ミームをかけて走行してもらい、常時目の動きをセンシングして、眠くなった時点でスマートフォンなどにアラームを出し、運転をやめてもらう。こうして居眠り運転を防ぐことができる。

 眼の動きを測定するメガネ型端末の開発に拍車がかかったのは、2012年4月29日に関越自動車道上り線の藤岡ジャンクション付近で起きた高速バスの事故だった。運転手の居眠り運転が原因でバスは防音壁に衝突。乗客7人が死亡し、39人が重軽傷を負った。群馬県出身のJINS田中仁社長は居眠り運転をなくしたいと強く思った。

 事故の2年前の2010年、「脳トレ」で有名な東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授から「眼電位を測定できれば眼の動きを把握できる」と聞いた田中社長が、「自分を見る」メガネ型端末の開発を思いついた。今回の開発では、川島教授が中心的な役割を担い、2013年1月に常設の開発部隊(現R&D室)が新設された。

世界初の三点式眼電位センサー

眼の動きを「見える化」したメガネ型端末。鼻パッド(2カ所)と眉間にある電極で眼電位をセンシングして視線や瞬きの動きを測定できる
眼の動きを「見える化」したメガネ型端末。鼻パッド(2カ所)と眉間にある電極で眼電位をセンシングして視線や瞬きの動きを測定できる

 人の眼球は、角膜側がプラスの、網膜側がマイナスの電荷を帯びていて、両者の電位差を眼電位と呼ぶ。ジンズ・ミームの鼻パッド(2カ所)と眉間部(1カ所)にある3つの電極で常時検出する眼電位から8方向の視線移動と瞬きのリアルタイム測定を実現している。この「三点式眼電位センサー」の開発は世界初だ。

 これまでも、視線移動を検知するアイトラッキング技術として、カメラを使用するタイプなどがあった。しかし、「電池消費やユーザーへの身体的な負荷の高さなど、ウエアラブル端末に必須である常時センシングの実現が難しい状況だった。今回、雑音除去や小型化、省力化で苦労したが、三点式眼電位センサーを埋め込んだメガネ型端末を開発できた」(R&D室の井上一鷹マネジャー)。

 「眠気を定量化することはできないが、視線移動と相関関係があるという仮説を立てており、検証中である」と、開発に協力した芝浦工業大学工学部電子工学科の加納慎一郎准教授は話す。

 ジンズ・ミームの重さは電池含めて約36グラム。加速度やジャイロのセンサーも搭載しており、頭の動きなども測定できる。今後、ビジネスパートナーと活用法を検討していくが、既に問い合わせが殺到しているという。データが大きな価値を生む、ジンズ・ミームはその証左と言えるだろう。

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