東京ガスは業務効率化のための分析に長く豊富な経験を持ち、大きな成果を上げてきた企業だ。同社は2016年以降のガス・電力の自由化による競争激化を見込み、ビッグデータ活用チームを立ち上げた。

東京ガスにおけるビッグデータ活用組織
東京ガスにおけるビッグデータ活用組織

 東京ガスは1971年に情報システム部門内にOR(オペレーションズリサーチ)チームを設置して以来、予測や最適化などによって業務効率化を進めて成果を上げてきた歴史を持つ。昨年度、その系譜を継ぐ「数理技術活用チーム」から「ビッグデータ活用チーム」を分離独立させた。今後の競争力強化のカギを握るチームとなる。

東京ガスの緊急車両
東京ガスの緊急車両

 東京ガスはエネルギー源の調達から供給までを担う公益企業であり、エリア内ほぼ全ての家庭や企業との取引がある。こうした場所で、定期的な点検や交換作業のほか、器具の故障やガス漏れなど様々な事態が発生する。作業員や緊急車両を急行させたり、対応するための部品管理など業務は多岐にわたり、複雑だ。

 数理技術活用チームはこうした課題を解決してきた。

調達計画の策定を数十分の一に

 例えば、効果が上がっているのが、生産部門におけるLNGタンカーの配船シミュレーションである。年間で300隻の3工場への配船を割り振っている。

 2012年度にNTTデータ数理システムの最適化問題のパッケージ「Numerical Optimizer」を応用したシステムを導入。それまで手作業で数時間から1日をかけて計算していたものが、10分程度で完了するようになったという。極めて短い時間で済むようになったことで、複数の条件で試して最適なケースを導き出すことが可能となった。

 また、顧客のガス設備を40カ月に1度以上点検する定期点検の巡回路の最適化も行った。顧客が増減したり不在であったり、東京ガスの事務所が担当エリアを変更したりすることなどから、作業員の移動距離が延びて予想以上に時間を要していた。

 数理技術活用チームでGIS(地図空間情報システム)を利用して策定システムを構築したところ、従来は手作業で計画の策定に3~4カ月かかっていたものが、2日程度で済むようになった。シミュレーション結果では担当者1人当たりの巡回距離が、3分の1以下に抑えられることが確認できた。

 2014年度には新たに開発した計画策定ツールを全社へと展開していく計画だ。

点検する際の巡回経路を最適化するシステム
点検する際の巡回経路を最適化するシステム
同じ色合いのところが近くにあると移動距離を少なくできる

ガスメーターの在庫を半分以下に

 ガスメーターの在庫最適化も大きな成果を上げた取り組みの1つ。

 事業部門である「導管部メーター統括グループ」と連携し、顧客のところで交換、または新設するガスメーターの型式や号数、量を予測する。2009年に開始し、2011年にシステム化に乗り出した。物流業務の改革効果もあり、現在までにガスメーターの在庫をピーク時の半分以下で安定させることができるようになった。

 ガスメーターが必要となる場面を、「計画需要」、「新設需要」、故障時や開栓時に交換が必要になった「突発需要」の3つに分けて、全体需要を割り出した。

 このうち原則10年で交換する計画需要が約8割を占めている。だから、元のメーターの更新時期や型番を考慮して在庫の量を決めればいいかと言うとそうでもない。工事する現場の判断で、施工する月や型式、号数が頻繁に変更されるからだ。

ガスメーターの需要を高い精度で予測した
ガスメーターの需要を高い精度で予測した

 そこで、「現場における計画変更をあらかじめ織り込んだ予測手法の確立が必要となった」(ビッグデータ活用チームの笹谷俊徳氏)。交換の満期まで日程的な余裕があるほど、工事の時期が先送りにされる傾向があるという。このパターンを、過去の計画と実績の差異から見いだして予測式に反映したところ、高い精度で予測できるようになった。

 一方で、分析を進める上では現場の体制を考慮することが極めて大事だと痛感したこともある。

 ガスメーターの故障などに対応するため、要員の出動件数のモデルを作成したことがある。故障の件数を左右する、気温の予報や曜日などから翌日以降の出動件数を高精度で割り出すことができた。具体的には、「前日と当日の最低気温と平均気温」「休日・祝日」「第1営業日」「正月」などの外部のデータも入力して予測モデルを作成した。

 しかし算出結果に合わせて、毎日のように要員の配置や体制を構築しなおすのは、現場に負荷がかかりすぎた。2012年1月まで活用し、現在は運用をやめている。メーターの改善によって故障自体が減ったという背景もあるという。

 数理技術活用チームとビッグデータ活用チームは各5人の陣容で、互いに連携しながら事業部門や経営戦略のビッグデータ活用を支援する。

 経済産業省がガス事業の地域独占を崩す、全面自由化の方針を打ち出している。電力事業とともに2016年にも解禁される見込みだ。数理技術活用チームの中山香奈子チームリーダーは「規制が外れて競争にさらされる。いよいよビッグデータの活用を本格化していく」と意気込む。

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