韓国のLG電子は全社と事業部の両レベルでビッグデータ活用の専門チームを結成し、トップダウンで事業を改善している。2010年に立ち上げたPDP(プラズマディスプレイパネル)事業部のビッグデータチームでは、製造工程のセンサーデータの分析によって、部品の不良品率を9割削減する成果を出した。

 PDP事業部で発足した分析チームは、分析担当者8人、IT担当者5人から成る。製造工程に問題が起きてから原因を特定するまでに、丸2日間かかることもあり、これを短縮して部品の不良率を引き下げるのが目的だ。

 工場には製造工程の気圧や湿度などを測定する2500個以上のセンサーが既に利用されていた。分析チームはこのセンサー情報をもっと活用するアプローチをとった。2012年にまず、膨大な因子の中から、変動の大きいものを洗い出し、次にそれらが品質に与える影響をロジスティック回帰分析で調べた。ロジスティック回帰分析とはある因子の影響の有無を確率の値で示す分析方法で、米SAS Instituteの分析ツールをカスタマイズして導入した。

 ツールの導入によって48時間程度かかっていた原因の究明作業が、12分1の4時間程度にまで短縮されただけでなく、新たな問題もあぶり出すことができるようになった。例えば、製造工程の気圧が低いと、不良品率が高くなることが分かった。このことに現場の製造エンジニアは気づいていなかった。「多様なビッグデータ分析をしなければ、気圧の影響までは見つけられなかった」と、ソン・ムガンPDP担当プリンシパル・エンジニアは言う。

 そこで、製造工程に空気を送り込むコンプレッサーの設定を微調整したところ、特定の部品の不良率が大きく低下した。50インチのPDP向けの部品の不良率は10分の1に、60インチ製品では2分の1に下がった。

分析結果を毎朝メール送信

 昨年には分析結果を日常業務で自然に活用する「オートマイニング」と呼ぶシステムを取り入れた。分析プログラムを毎日動かして、そのサマリーレポートを毎朝担当のエンジニアに電子メールで送るというものだ。これによって、分析の専門知識がなくても要点を把握できるようになったという。

 同レポートでは、どの種類の不良はどの工程のどこが関係している確率が高いのか、昨日発生した不良だけでなく、不良発生の長期的・全体的なトレンド情報なども示している。

オートマイニングの流れ
オートマイニングの流れ

 エアコンや洗濯機のようなアセンブリ主体の工場と比べると、PDP事業は装置産業型のため多数のセンサーを使用し、ビッグデータ活用の重要性が高い。LG電子全体で見ても、装置産業型の工場のほうがビッグデータ活用の取り組みは進んでいる。

 しかし液晶技術の進歩に圧倒され、PDP事業の将来性は大きくない。それでもビッグデータの技術への投資を進めてきたのは、ビッグデータ技術にかける経営陣の強い意志があったからだ。「ビッグデータへの投資はトップダウンだった。私たちの経営トップは非常に高い見識を持っている」(ソン氏)と現場の技術者も語っている。

 ビッグデータの活用が組織にしっかりと浸透するには時間がかかる。このため、たとえすぐに成果を出せなくても方針を堅持するトップのリーダーシップが必要だという。

 ビッグデータへの投資はLG電子の技術陣の実力をアップさせ、全社の品質管理部門である「生産技術部」を交流の場として、他事業への横展開も可能にした。「ビッグデータの活用に取り組むことで技術者として成長できた。経営トップに感謝している」(チョン・ボヒョンテレビ事業部PDP担当チーフリサーチエンジニア)と言う。

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