東芝は企業向けのノートパソコンに搭載するハード・ディスク・ドライブ(HDD)の故障を、高精度に予測する技術を開発し、2014年度から本格的に提供を始めた。全世界の顧客の約200万台ものHDDの稼働データを収集して予測モデルを構築。最終的に故障に至る可能性が高い予兆と、そうでない予兆を見分けて通知することで、顧客のPC管理の効率化を図る狙いがある。

 2014年2月、東芝のノートPCを利用する企業向けの管理サービス「東芝スマートクライアントマネージャーV2(TSCM V2)」として受注を始めた。従来技術との違いは「本当に故障に至る可能性が高い予兆をとらえて警告を出すこと。管理者が不要な作業に追われることがなくなる」(東芝 研究開発センター システム技術ラボラトリーの西川武一郎研究主幹)ことだ。

 東芝が全世界で管理している約200万台のPCに搭載されたHDDの稼働情報と、各地域にある修理センターに持ち込まれたPCの情報を、シリアルIDをキーに結びつけて分析している。修理センターに持ち込まれたHDDが、どのような状態を経て最終的に故障に至ったのかが分かる。

東芝のHDD故障予知の仕組み
東芝のHDD故障予知の仕組み

 予兆を判定するために用いる情報は「S.M.A.R.T.」と呼ぶ、HDD業界で標準的な管理データ群で、読み出しエラーの割合やディスクの回転数、稼働時間、温度、衝撃を与えられた回数など多岐にわたる。対象のデータは700個以上あり、このうち故障の発生と相関が高いものを選び出して、リスクを算出する予測のモデル式を作った。結果によって調整を繰り返す機械学習アルゴリズムである「ブースティング」によって、予測モデルを改善している。

 この仕組みを導入すると管理者の画面で、社内のどのPCが故障に至る確率が高いのかが一目で分かるようになる。エラーなどの予兆はあるものの、そのままの状況が続いたり、ある期間でリスクが下がったりするようなパターンの場合は「黄色」として、即座にバックアップの必要がある高リスクの「赤」と区別している。予測のモデルに、リスクの高い状態がどの程度継続するのか、今後下がる見込みはあるのかといったロジックも盛り込むことで実現した。

企業内の管理者が利用する画面 故障リスクの高い順に「赤」「黄」「緑」で各PCを分類する(東芝の資料より引用)
企業内の管理者が利用する画面 故障リスクの高い順に「赤」「黄」「緑」で各PCを分類する(東芝の資料より引用)

PC管理の手間が従来の3分の1に

 導入企業にとっては、管理者がPCの修理や更新の計画を立てて、事前にバックアップを促すだけでなく、すべての故障予兆に対応するムダも減らせる。「PC管理の手間は、従来の3分の1程度になるのではないか」(同社)。

 東芝は、顧客がPCをセットアップする際などに、PCやHDDの稼働状況のデータを提供する許諾を取得している。東芝は2008年からPCの稼働管理ソフトを通じてHDDなどの情報を取得しており、現時点で全世界で約200万台に達した。東芝は世界に3社ある大手HDDメーカーの1社でもあり、東芝製のHDDの故障情報については自社のHDD事業で活用しているという。

 今後、フラッシュメモリーを利用した大容量記憶媒体であるSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)に対しても、故障予測の技術を適用していく考えだ。

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