セブン&アイグループにおけるビッグデータ活用の狙いや体制の概要の一端が明らかになった。店舗での商品発注精度を高めるために、発注端末にビッグデータの分析結果が表示できるようにする。向こう3年で、同グループのオムニチャネル構想実現のために数百億円規模のシステム投資を実行する。

 「米ウォルマート・ストアーズなど(本部が商品発注を担う)セントラルバイイングを導入している米流通企業とは、ビッグデータ活用の前提が異なる。セブン&アイグループとしては、店舗の現場で活用できなければ意味がないと考えている。店舗の担当者約30万人が商品の発注などをする際に、ビッグデータの分析結果を活用してもらうことこそ、我々のグループが目指すところだ」

 セブン&アイグループが「小売業の第2のステージ」と位置づける「オムニチャネル」に大きく舵を切る中、ネットとリアル店舗が融合することで日々蓄積されていく膨大な購買データとヤフーなど外部のデータを統合させるビッグデータの活用に関する基本的な考え方や体制が明らかになった。

 グループの中でオムニチャネルの推進役を担うセブン&アイ・ネットメディアの鈴木康弘社長は、冒頭のようにビッグデータ活用に関する、米国企業との違いを明確に説明する。なお、セブン&アイ・ネットメディアは、EC(電子商取引)サイト運営のセブンネットショッピングとグループ中間持株会社の旧セブン&アイ・ネットメディアが合併し、2014年3月1日に発足。グループと連携を取りながら、オムニチャネル戦略を推進している。

 セブン&アイとしては、ビッグデータもこれまでのPOS(販売時点情報管理)データなどと同様に、あくまで新しい商品やサービス、顧客が望む品揃えといった仮説を検証するためにビッグデータを活用する。どの商品をどう販促したらどう売れたか、データによって精緻に検証するというものだ。

 「活用するのは現場にいる1人ひとりだ。世間ではデータサイエンティストが必要だといわれているが、いくらデータだけを見ていても分からない。しっかりとした仮説を立てて、それを検証するためにデータを使う。ビッグデータ活用の目的をはっきりさせる必要がある」と鈴木社長は言う。

 鈴木社長が例に挙げるのは自主企画商品セブンプレミアムの「金の食パン」。「こうした商品は、データだけを見ていても思いつくものではない。消費者は安売りに飽きたのではないか、上質なものが求められているのではないかという仮説を立てられるかどうかが重要だ。ビッグデータは仮説の検証に使う」(鈴木社長)と言う。

 その意味で、「iPad」のような発注端末で店員がビッグデータの分析結果を取り扱えるようにするという。商品の売れ行きに影響を与えるテレビ番組、そして客足に影響する天気予報や地域の催し物に関する情報など、多様なデータを表示できるようにする。

昨年12月に始動したビッグデータWG

 セブン&アイグループのオムニチャネルプロジェクトには7つのワーキンググループ(WG)があり、昨年12月から活動している。7つのWGには、セブン&アイグループの主要な事業会社やヤフー、グーグル、日本オラクル、NEC、NTTデータなどのIT企業から約130人が集められている。「会員」や「サイト」「店舗」「商品」「物流」「メディア」とともに「ビッグデータ」のWGがあり、火曜日から金曜日までの午前中、会議を開いて様々なテーマを検討。鈴木社長は7つのWGすべてに参加している。

ビッグデータのワーキンググループは店舗の発注者が活用できる体制を目指す
ビッグデータのワーキンググループは店舗の発注者が活用できる体制を目指す

 ビッグデータWGでは、販売データをどう活用するか、顧客の行動データをどう取るか、公共データとどう連携するか、データそのものは自社で持つか、外部で持つかといったテーマについて検討している。今後、セブン&アイ・ネットメディアは、ビッグデータを蓄積して分析・活用するためのインフラの構築を進めていく。向こう3年で数百億円規模のシステム投資になるという。

 詳細は未公表だが、2014年度は、100ぐらいの実験とシステム開発が並行して走るもよう。例えば、ECサイト「セブンネットショッピング」において、ヤフーが「Yahoo! JAPAN」と企業のサイト利用者データを組み合わせて分析・コンサルティングするサービス「プライベートDMP」を活用した販促の実験をする。また、セブンイレブンの食事宅配サービス配達員が持つ端末でECサイトの注文を受け付ける実験も予定している。こうした実験の結果を受けて、2015年度にオムニチャネル戦略とビッグデータ活用に関して、何らかの方針を打ち出すとみられている。

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