ヤマトホールディングス(HD)が2015年1月から順次稼動させる次世代基幹システムにおける、ビッグデータ活用が明らかになった。顧客と密にやり取りすることで得られる業務データを活用することで「宅急便」を再配達するケースを減らし、満足度の向上とコスト削減を両立させる。

 「宅急便」の荷物を再配達しなくて済めば、顧客の手間も減り、我々の物流コストも抑えられる--。ヤマトHDの経営戦略とIT(情報技術)戦略を担当する小佐野豪績執行役員は、次世代システムのメリットについてこう語る。

億単位の荷物が再配達に

 ヤマト運輸は年間16億4000万個(2014年3月期の見通し)もの荷物を運んでいる。約3割が顧客が不在で再配達となっているとすれば、実に年間5億個もの荷物が2度、3度と配達されている計算だ。「仮に100個のうち30個の再配達が10個程度に減らせれば、大幅なコスト削減になり利益率が高められる」(小佐野執行役員)。ヤマトHDは連結売上高が1兆円以上ありながら、営業利益が六百数十億円にとどまっている。現在約5%の営業利益率の引き上げに対する期待は大きい。

再配達を減らせば、顧客満足度とコスト削減を両立できる
再配達を減らせば、顧客満足度とコスト削減を両立できる

 「明日、荷物を届けますが、何時頃お届けすればいいでしょうか」

 2015年1月以降、ヤマト運輸から配送予定をおうかがいするメールが入り、スマホや携帯などから受け取りたい場所と時間を指定できるようになる。指定した時間に外出しなければならなくなったときは、メールで連絡すれば配送時間を変更できるようになる。さらに荷物が届く約15分前に「15分前メール」が送られるようになる。

都合にあわせた場所と時間で受け取れる

 荷物を受け取る側は、自分の都合に合わせて自宅やコンビニエンスストアなどで宅配便の荷物を受け取れるようになる。顧客満足度(CS)が向上する。顧客から荷物を届けてくれるトラックが今どこにいるのかが分かるようにすることも検討している。荷受け側は、いつ届くのか分からないというストレスから解放されるというわけだ。

 一方でヤマト運輸側にもメリットがある。宅配便の荷物がいつどの地域にどのくらい届けられるのか、9割以上の荷物に関しては事前に把握できるようになる。配送予定のメールを送ったり、荷受け側から場所や時間の指定・変更のメールを送ったりして双方向のコミュニケーションが活発になる。そのために、宅配便の荷物に関する「到着場所」「到着時間」「荷物の種類(クール宅急便か通常の宅急便なのかなど)」といったまさにビッグデータがリアルタイムで蓄積されていくからだ。

ビッグデータでトラックや作業員の配置を最適化

 こうしたデータをトラックや作業員の配置に生かすことで、コストの最適化を図る。配送トラックや配送要員などの手配が余裕を持ってできるようになり、サービス品質の改善を図ることができる。「クール宅急便」がどの程度届くかも把握できるので、大きな冷蔵庫を積んだトラックをどのくらい配車すればいいのか、正確に分るようになる。昨年起きたような「クール宅急便の荷物を常温で置きっ放しにしておく」といった問題は起きなくなる。

荷物の動きをビッグデータで把握し、トラックの運行を最適化する
荷物の動きをビッグデータで把握し、トラックの運行を最適化する

 さらに配送用トラックの走行距離が短くなるので、ガソリン使用量は確実に減る。配送要員を余分に抱えることもなくなり、仕事量に見合った要員の配置が可能になる。「現状では、荷物が拠点を通過したかどうかを把握しているが、ある地域にいつどのくらいの荷物が届くかといったことは、勘に頼っていた。次世代システムが稼動すれば、極めて正確に把握できるようになる」(小佐野執行役員)と言う。

 顧客が新サービスを受けるには、氏名や自宅の住所、電話番号、メールアドレスといった個人情報を登録し、同社の「クロネコメンバーズ」の会員になる必要がある。実は現在も1000万の会員がいて、配送時間や受け取り場所も変更できるが、あまり使われていないという。その一つの理由として、出荷時の伝票に書かれている情報がすべてデジタル化されていないことがある。配達先の顧客がクロネコメンバーズであることを認識できないのである。こうした状況を解消するため、コンビニエンスストアなど発送店における、宛名情報のデジタル化に取り組む。

削減したITコストを個人情報保護にあてる

 次世代システムではドライバーが携行する端末を専用機から、コストが半分以下の汎用のタブレットに更新する。クラウドベースのシステムに移行するため、端末側にデータを置いたり、特殊な機能を使ったりすることがなくなるからだ。こうして浮いたコストをパーソナルデータの保護などセキュリティの強化に回す。大量の個人データを扱うことが想定されるため、2倍以上のコストをかける計画だ。二重三重に保護することで、絶対に漏洩しないようにするという。

2017年に営業利益を230億円引き上げる
2017年に営業利益を230億円引き上げる

 ヤマトHDが今年1月30日に発表した新中期経営計画。2017年3月期の売上高営業利益率を、2014年3月期より1ポイント近く改善し、5.8%とする方針を明らかにした。1ポイントといっても売上高も1900億円引き上げるので、230億円規模となる。その実現には次世代システムが大きなカギを握っている。