カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、ビッグデータの特徴であるデータの「多様性」や「企業連携」で価値を生み出している。昨年末からは、データ分析サービスの提供先を加盟企業以外にも拡大した。製造業などTポイントのサービスに加入しづらい企業の利用を見込んでいる。

 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、ビッグデータの特徴であるデータの「多様性」や「企業連携」で価値を生み出している。

 CCC傘下のTポイント・ジャパンが4800万会員を擁する共通サービスの「Tポイント」を運営しており、多種多様な業態における購買データを収集して分析している。CCCのビデオレンタル店「TSUTAYA」が中核だが、ガソリンスタンドの「ENEOS」、コンビニエンスストアの「ファミリーマート」、コーヒーチェーンの「ドトール」など、業態が異なる108社・約6万7000店舗(2013年12月末時点)のデータが得られる。売り上げにまつわるPOSデータは各加盟企業に、Tポイントの加算に関するデータがCCC側に行くという仕組みである。

CCCは加盟108社の売り上げデータを分析
CCCは加盟108社の売り上げデータを分析

 CCCは加盟各社からデータ分析の依頼があった際、対象商品やサービスのデータを提供する各企業の了解を得たうえで、実施している。

 例えば、ある缶コーヒーの購入者が、カー用品店、ガソリンスタンド、レンタカーなどでTカードを使っている傾向があることから分かる。つまり、缶コーヒーと「運転免許の所有」に強い相関関係があるわけだ。そうした条件に合う会員に、缶コーヒーを割り引くクーポンを発行したところ、クーポンの利用率が倍になったという。

 昨年末からは、データ分析サービスの提供先を加盟企業以外にも拡大した。こちらも対象とするデータの発生元の企業の承諾を得るのが条件であるが、製造業などTポイントのサービスに加入しづらい企業の利用を見込んでいる。

 ローソンが中心となって運営するポイントサービス「Ponta」も、Tカードと同様のアプローチで展開しており、69社・約2万2000店舗(2014年2月21日時点)が参加している。

膨大な走行情報の活用先を模索する自動車メーカー

 CCCは数千万人規模の会員が生み出す膨大なデータから、新たな価値を生み出した。同様に、多くの顧客を抱える通信事業者や自動車会社もデータや分析レポートの外部提供を始めた。ただし、その収益化については、模索が続いているのが現状だ。

日産自動車は電気自動車「リーフ」の走行情報をセンター側に蓄積している
日産自動車は電気自動車「リーフ」の走行情報をセンター側に蓄積している
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 大手自動車メーカーは、それぞれ異なるアプローチで顧客の走行データの販売を模索している。
 日産自動車は電気自動車(EV)「リーフ」の位置や走行距離などの情報を、1回の走行が終わるごとに同社のデータセンターに無線で送信しているが、それらのデータを外部に提供し始めた。

 まず昨年、損害保険ジャパンに対して走行距離情報を提供し、顧客の走行距離によって保険料金が変わる新しい損害保険を販売できるようにした。

 また、リーフの位置や走行距離、停車時間といった情報を外部からアプリケーションで取得できるようにすることも検討している。例えば、「電力が必要な商業施設がリーフを誘導し、駐車料金が無料になるといった仕組みが考えられる」(電子技術開発本部IT&ITS開発部の二見徹エキスパートリーダー)と言う。

 こうしたデータを外部に有償で販売することに対しては、「可能性はゼロではない。ただ、仮にデータでもうけてもせいぜい多くて数十億円ではないか。データを10兆円の本業で生かした方がいいだろう」(同)と考えている。

 実際、EVの心臓部ともいえる大型リチウムイオン電池について、蓄積されたデータを基に日々改善しているという。「ごくまれだが、電池に不具合の兆候データがあり問題を未然に防いだケースもある」(同)

 トヨタ自動車は、外部と無線で情報をやり取りできるテレマティクス端末を搭載したクルマから位置や速度などの情報を取得して、蓄積している。実際の走行情報として昨年6月、「ビッグデータ交通情報サービス」の提供を始めた。自治体だけでなく企業にも提供し、料金は月額20万円から。ただし「このサービスでもうけるという考えはない」(同社)と言う。

 自動車業界におけるビッグデータ活用の本命は、自動運転技術の向上や渋滞解消など社会課題の解決にある。データ販売により投資費用の一部を回収しつつ、分析や活用の経験を積むことが大切な段階にあるといえよう。

NTTドコモ、人口動向統計売上高20億円超へ

 NTTドコモは昨年10月、基地局情報を基にしてエリア内の人口動向を把握できるサービス「モバイル空間統計」を正式に提供し始めた。

 都市部であれば1時間ごとの500mメッシュの人口密度や、どのエリアからどういったユーザーが来ているのかといったことが分かるというものだ。契約者のプロフィルは、年代・性別、居住エリアといった単位で統計的に集計している。

 従来は災害対策など公共性の高い分野に絞っていたが、今回企業にも提供を始め、収益化へと一歩踏み出した格好だ。「事業として確立し投資を回収しないと、(データ提供先の)顧客を支援し続けられない」(スマートライフ推進部ビジネス基盤推進室の矢野達也担当課長)。

 料金表はないが、ある市内のデータについて1日分析する場合で100万円からという。エリアが広がるごとに料金は高くなる。

 さらにモバイル空間統計を顧客へ提供する窓口として、データ分析のノウハウを持つマーケティングリサーチ会社のインテージとの共同出資会社、ドコモ・インサイトマーケティング(東京都港区)を活用していく。顧客の課題に合わせたコンサルティング営業を強化していく考えだ。

 2014年には企業と公共団体、それぞれ10件の契約を獲得し数億円を売り上げ、5年後には年間20億~30億円の規模まで引き上げる。

全国4000カ所に環境センサー

 NTTドコモがデータ販売事業として、2008年から根気強く展開しているのが携帯電話の基地局周辺の環境データを収集する「環境センサーネットワーク」である。

 全国の基地局の15分の1に当たる4000カ所にセンサーを取り付けてサービスを提供している。気象庁のアメダスが全国1300カ所であるのに対して、よりきめ細かなデータを収集できるのがウリだ。センサーの種類も花粉や紫外線、雷などと種類が多く、独自の情報が取得できる。

 同サービスは2010年にセンサーの整備が完了したが、赤字の状態が続いているとみられる。スマートライフビジネス本部の坪谷寿一環境事業推進担当部長は「反転攻勢に出たい」と意気込む。

 普及への課題の1つはデータの提供料金である。現在は1観測点の1時間ごとのデータを月額数千円から提供しているが、観測点を増やすたびに固定費として利用企業の負担は増えていく。

 坪谷部長は「活用分野の開拓が進んで利用者が増えれば、コストは10分の1程度まで下げられるのではないか」と話す。現在のところ約30の顧客と契約している。3分の2が鉄道や製薬、電力といった民間企業という。今後、農業や健康、防災、流通などの分野に注力していく。顧客の困りごとに対する解決策の提案力も強化していくという。価値あるデータへの加工法が問われる。

必要に応じたデータの精度を

「Suica」の問題から分かる データ活用の注意点
「Suica」の問題から分かる データ活用の注意点

 データの“販売”を巡っては昨年夏、JR東日本がICカード「Suica」の乗降履歴データを日立製作所に提供し、消費者から強い反発を受けた経緯がある。

 ここまで先進各社の事例を見てきたが、実際に自社でデータやデータ分析レポートの販売を事業化する際に、どこに注意すべきなのか。そのSuica問題で指摘された点が参考になるだろう。

 JR東日本が販売しようとしたデータは、匿名化されていたものの、必要以上に精度の高いデータとして提供されていた。分析した統計データではなかった。また、提供を拒む利用者に対して個人データの除外、いわゆる「オプトアウト」の方法が適切に告知されていなかった点も指摘された。

 利用者の便益からみれば、データが提供されることに対して明確なメリットがなかった点も反発を招いた一因だろう。例えばポイントカードのように、店に提示することでポイントがたまり、それで買い物ができるといったメリットの提供だ。

 社会的な観点にも配慮しつつ、データやその分析結果の販売によって、自社と販売先、そして販売先の顧客のすべてにメリットがもたらされることがデータで稼ぐ成功の条件であると言える。