野村総合研究所(NRI)はスマートフォン向けナビアプリ「全力案内!ナビ」を提供している。タクシーの無線配車システムというこれまで利用されていなかったデータの「種」に着目したのが特徴だ。年間13億キロメートル分の走行データを集めて、低コストで高精度のサービスを実現した。

 車載型カーナビの多くはVICS(道路交通情報通信システム)情報を基に渋滞予測やルート計算を行う。だが、VICSは主として幹線道路に設置された固定のセンサーからしか情報を収集しないため、情報が限定的という短所がある。

 NRIは全国のタクシー会社と契約し、約1万3000台のタクシーから走行情報を取得する。タクシーの無線呼び出しに使うGPS(全地球測位システム)や携帯電話のGPSデータを分析することで、精度を上げる狙いだ。

 タクシーの走行距離は一般自動車の200倍。アプリ契約者の端末から収集するGPS情報も合わせると、合計で走行距離にして年13億キロメートル、データ量にして30テラバイト規模のデータベースになる。この大容量データを、「UTIS(Ubiqlink Traffic Information System)」と呼ぶシステムで処理する。UTISは、走行中の自動車の位置情報や速度からデータを生成するプローブ交通情報を土台とした独自システム。毎分6万件アップロードされる走行データをほぼリアルタイムに解析し、端末側には15分単位で最新情報を反映する。タクシー会社ごとにデータ形式がばらばらという問題も、分析と加工の仕組みを工夫することでクリアした。

 タクシーは裏道を通ることが多く、VICSベースのカーナビに比べ「全力案内!ナビ」がカバーする交通情報の提供範囲は十数倍に達する。

 例えば2011年3月11日の東日本大震災時、「全力案内!ナビ」のユーザーは裏道の交通情報もリアルタイムで把握できたため、抜け道を探すことができた。

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