ネスレ日本は2016年11月21日から自動応答による顧客サポート「ネスレ・チャット・アシスタント」を開始した。日本アイ・ビー・エムのコグニティブ・システム「Watson」を活用して実現した。
ネスレ日本のウェブサイトなどで、「ゴールドブレンドのおいしい淹れ方を教えてください。」と入力すると、「『ゴールドブレンド』の淹れ方は、カップにパウダー約2g(スプーン1〜2杯)入れ、沸騰後80〜85℃に冷ましたお湯140mlを注ぎます。…」と淹れ方を教えてくれる。

ネスレ日本は日本IBMのWatsonを活用して、ネスレ日本の顧客対応窓口「ネスレVOCセンター」におけるサービス向上に共同で取り組んでいる。第一弾がウェブサイトやLINEアプリに対応した本システムだ。
ネスレ日本にとって、顧客サポートはブランド価値を高めるうえで非常に重要な業務だ。神戸市の本社にあるネスレVOCセンターが中心になって対応している。2013年からは人によるチャットも提供。今回は、この業務をWatsonに対応させることにしたというわけだ。なお、必要に応じてコールセンターおよび人によるチャットを案内している。
急増する顧客サポートに対応
その背景には、ネスレ日本が販売しているコーヒーマシンのサポート急増がある。同社は2010年、従来の流通・小売りに加えて直販に踏み切った。以来、顧客からの問い合わせに対してネスレVOCセンターが対応してきたが、2012年秋にスタートしたサービス「ネスカフェ アンバサダー」によって桁違いにコール数が急増していったという。このサービスは、オフィスにマシンを貸し出して会員が通販で定期的にコーヒーを注文するというもの。扱う商品が食品から家電製品へ変わったこともあり、問い合わせ需要が高まった。
「Watsonは高価であり、ほかにも選択肢はあった。しかし、会話をしっかり取っていくことが重要なファクターになると考えてWatsonを選んだ。単なる一問一答ではなく、対話を通してブランドを作れるように精度を上げて会話の幅を拡げたい。Watsonの採用は、将来の拡張性を意識したこともあった」とマーケティング&コミュニケーションズ本部コンシューマーリレーションズ部の野崎善教部長は説明する。
「大きなチャレンジ。日本語API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の1つであるNLC(Natural Language Classifier)APIとダイアログAPIが使えるレベルかどうかがポイントになった」(野崎部長)と言う。日本IBMによれば、ネスレVOCセンターにある過去のオペレーターによる顧客対応のやり取りやノウハウ、FAQ、ネスレ製品情報、コーヒーマシンのメンテナンス情報(故障対応)などをNLC APIを使って学習させた。
野崎部長は、「FAQを作成するのに手間がかかった。様々な形態や言い回しを用意した」と話す。なお、コミュニケーションロボットでなく、コーヒーマシンなどの疑問に対して回答することを目的にしているため、雑談の類には応答しない。