京都の行政におけるデータの提供や活用が進んでいる。観光情報のオープンデータ提供のほか、人工知能(AI)を活用した行政の効率化など官民の連携を前提としたビッグデータ活用に取り組む。

 京都で官民連携のためのデータ活用プラットフォームの整備が一斉に始まった。行政のデータを民間に公開することで、課題の解決や新事業の創出に生かしていく。

 京都府はデータ活用による官民の競争力強化を目指し、「スマート京都推進プラン」に取り組んでいる。京都府政策企画部の梅原豊副部長は「京都府は中山間地域も多く、2040年に人口が15%減ることが予想される。行政と地域住民が連携して競争力を強化しないと、課題解決が難しい。データ活用をその基盤としていきたい」と背景を語る。

官民の連携によるAI・ビッグデータ活用を進める「スマート京都推進プラン」
官民の連携によるAI・ビッグデータ活用を進める「スマート京都推進プラン」

 2017年度に本格的な構築・運用に乗り出す計画で、府や市町村に関連するデータを掲載し、住民が入手したり加工したりできるようにする「京都データストア」を開設する。京都市とも連携する方針で、「地元の市民団体などの意見を聞きながら、必要とされるオープンデータの生成にも取り組む。データ分析の機能も導入したい」(京都府政策企画部政策企画部長付の東健二郎副主査)。

AIで府庁職員の仕事を支援

 同プランはAIの活用についても掲げる。同年度に本格導入する計画で、府職員の業務効率化と府民サービスの向上を掲げる。業務効率の向上では、「例えば、政策の立案・実行の支援に活用できないかと考えている。政策に対する過去の答弁を的確に抽出し、政策の変遷は何と関連しているのかを判断したい」(東副主査)。

 これらに先駆けて京都府は2016年12月2日、ソフトバンクとロボットやICTを活用した包括連携協定を結んだ。まずはヒト型ロボットの「Pepper」を府内の観光案内所に配置し、観光情報を多言語で説明する取り組みを始める。順次設置する計画で「観光客によく聞かれる内容をデータとして公開したい」(東副主査)。AIによる業務支援にも同協定を活用し、他の民間とも連携する。

 一方、京都市は2016年11月30日、市に関連するオープンデータのポータルサイト「KYOTO OPEN DATA」を開設した。京都の観光や文化に関する情報を中心に積極的にデータを公開しているのが特徴だ。他の分野も含めて200以上のデータセットを公開している。

京都市が2016年11月に開設したオープンデータサイト
京都市が2016年11月に開設したオープンデータサイト

 目立つのは観光特化のユニークなデータを公開していること。例えば、旅館業法に基づく京都市内の許可施設の一覧データ、市内1000カ所以上の史跡石標・道標の名称や住所、北緯・東経データ、二条城全体図データ、情報サイト「京都観光Navi」に掲載する約650カ所のスポットの説明や場所などのデータを提供する。

 京都市総合企画局情報化推進室の清水和孝行政情報化推進係長は、「京都に来ていただいた観光客の方に、安心して宿泊し楽しんでいただくためのデータを提供していきたい。これらを利用したアプリの開発が進むことを期待する」と話す。

 アプリとして、史跡石標・道標のデータを利用して民間企業が開発したスマホ向け観光アプリ「いしぶみアプリ」が登録済みだ。京都の中小IT企業で構成する任意団体「京都クラウドGOZAN」が2015年から提供しており、スマホを使って史跡石標・道標などを巡ることができる。

統計情報の利活用で実成果も

京都府警は統計データのGIS活用で交通事故を抑制した
京都府警は統計データのGIS活用で交通事故を抑制した

 統計データを地域の課題解決に活用するのが京都府警である。2016年7月に全警察署で、交通事故の統計データをGIS(地理空間情報システム)上で分析できる新システムを本格的に稼働させた。「事故や死者を減らすためにどうするべきか。統計を重視し効果を出すため、どのようなデータや情報が必要なのかを見極めている」(京都府警察本部交通部交通企画課交通戦略室の小野慶秋室長)。

 着目したのが高齢者だ。「高齢者は交通事故で亡くなる率が高い。交通事故の死者を減らすため、交通事故全体の抑制と並行し、高齢者の事故をなくす取り組みに絞り進めるべきと判断した」(交通戦略室情報分析担当の西野隆司室長補佐)。

 GISの画面上に事故のピンポイントの場所と、多発エリアのヒートマップを表示。そこに高齢者の居住密度のデータを重ね、どのエリアを重点的に対策するのかを見いだした。

 対策は高齢者宅の戸別訪問や、交通安全の講習を重点的に行う地道なものだ。2016年1~11月の交通事故の死者数は前年比21人減の56人。このうち高齢者は同12人マイナスと大きく減った。

 同システムは2015年10月から府警本部と一部のモデル警察署で導入した。月別で見ると毎年3月の事故件数が多いことから、2月にエリアを特定して各警察に指示を出すことでも成果を出した。事故件数全体が減少し、統計による検定で自然減少ではないことが確認できたという。

 一方、京都市は総務省統計局が公開するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を活用し、統計データを容易に可視化できるウェブアプリを提供している。

 統計担当職員が独学で開発したもので、国勢調査などの統計データを、対象の情報や期間を選択するだけで絞り込んだり、グラフを表示したりできるようにした。

京都市が提供する「次世代統計アプリ」
京都市が提供する「次世代統計アプリ」

 開発した京都市総合企画局情報化推進室情報統計担当の井上卓也氏は「統計に親しんでもらいたい思いがあった。他の政令指定都市の分析も可能なため全都市にソースコードを提供した」と言う。

 これら府警と市の取り組みは、総務省が2016年11月に発表した「地方公共団体における統計利活用表彰」において、特別賞と統計局長賞をそれぞれ受賞した。

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