ドローンとクラウドを組み合わせたソリューションを提供するエアロセンス(東京都文京区)は、深層学習(ディープラーニング)を用いて、ドローン測量で使う位置特定用マーカーの開発を進めている。

 同社は、ドローンを使った空撮で土木測量を効率化するソリューションを提供している。技術開発部の村越象氏は、「空撮画像から、最大誤差10cm以下で3Dのモデル化をすることができる。広大なエリアで3Dモデルを作るとなると、ドローン以外の方法では実現が難しい」と説明する。

 ドローン測量でも課題がある。それは、撮影した空撮画像の絶対位置の精度を高めることだ。「空撮画像から測量するには、どの位置を撮影したのかを正確に知る必要がある。そのために地上には正確に測量した点を示すマーカーを設置し、空撮画像からマーカーを探し出して位置の基準とする」(村越氏)。

 この課題の難易度を高めているのは、高度数十メートルから民生用のカメラを使って撮影するため、空撮画像から正確にマーカーを識別することが難しくなること。マーカーの色や形状が変化して捉えられてしまい、判別が難しいのだ。

地上に置いたマーカーを上空から撮影すると、色が変化し形が変形してしまう
地上に置いたマーカーを上空から撮影すると、色が変化し形が変形してしまう

 村越氏らは、空撮画像でも判別がしやすいようなマーカーのデザイン開発に深層学習を活用している。実際に空撮した数千枚の画像データに加えて、マーカーの色や形状といったデザインを変更したシミュレーション用のデータで学習させた。

 「深層学習を利用してどのようなデザインのマーカーが検出しやすいかを、短時間で検証できるようになった。深層学習を使って人手を介さずにマーカーを検出するという運用への適用も検討中」(村越氏)だ。

 エアロセンスは顧客へのソリューションにも深層学習を活用しようとしている。ブレインパッドの協力を得て、空撮画像から停車している自動車の台数を計測するソリューションを開発した。

転移学習で自動車を識別

 このモデルでは、116台の自動車が写っているテスト画像データで、122台の自動車があるという検出結果を得た。「ピッタリの正解ではないが、かなりの精度で自動車を認識できることが分かった」(クラウドサービス部部長の小早川知昭氏)。

 空撮画像から自動車を認識するための専用のモデルをゼロから作ったのではないところに特徴がある。

 グーグルの深層学習ライブラリである「TensorFlow(テンソルフロー)」を活用した。テンソルフローで利用できる「Inception-V3」という一般的な画像認識モデルを使い、画像データから特徴量を抽出したベクトルを作成。この際に、約130枚の自動車の空撮写真を教師データとして利用した。特徴量を抽出したベクトルは、さらに機械学習の一種であるSVM(サポートベクターマシン)で学習し、結果を得る仕組みだ。

 「既存の学習モデルを使って、異なる課題を学習させる、いわゆる転移学習の手法を使った。今回は約130枚という少ない画像でも良い成果を得ることができた」(小早川氏)と評価する。