医薬品の受託開発業務を手掛けるシミックホールディングスはビッグデータを活用した人材管理に乗り出した。買収や海外展開などで、連結の社員数はここ3年間で約1000人増えた。職種が多様化するなか、6000人のグループ従業員の人材の特性を把握したうえで最適配置を行う。

 シミックホールディングス 人財部プロジェクト担当の藤崎照浩氏は「成績のいいハイパフォーマーは今でも分かる。一方、社員の特性によっては他の部署やポジションで成果を上げられる可能性があり、可視化によって異動やチームの組成に活用したい」と狙いを語る。

 まず従業員に対し「CUBIC」と呼ぶ専門会社の適性検査を実施し、それぞれの従業員の持つ特性をデータ化。人材管理のタレントマネジメントシステムに登録し、2016年10月に運用を始めた。各従業員について「客観性」「持続性」「競争性」「自尊心」「慎重性」などの特性を数値化し、個人やチームの特性を可視化した。

最適な職種や部内相性を分析

 例えば、下図はロールモデルの上司と部下の適している職種を分析のうえ示し、特性を比較したものだ。ロールモデルに対する各従業員のマッチ度を数値化することもできる。

従業員の特性を比較したり、適した職種を分析できる
従業員の特性を比較したり、適した職種を分析できる

 各特性についてのそれぞれの従業員が持つギャップが明らかになるため、「感覚的な要素を排除してそれぞれの従業員の育成プランを立案し、それに応じた研修の機会を与えられる」(人財部タレントマネジメントグループの那須恵美担当部長)。

 それぞれの従業員の特性から、相性の良しあしも分析できる。データから相性のマトリックスを生成し、相性が悪い組み合わせには「相性はやや悪く、何かの拍子で一方が不快な思いをする可能性がある」という「△」を示し、注意を与える(下図)。

部内の従業員の特性から相性も診断可能
部内の従業員の特性から相性も診断可能

 サイダス(東京都港区)のクラウド型のタレントマネジメントサービスを採用。プロフィル管理、分析・比較、目標管理、後継者管理の機能を導入した。2018年春入社の新人採用にもCUBICによる適性検査を実施し、自社に合う人材の獲得を目指していく考えだ。

 従業員の人材データに加えて評価情報も蓄積していくと、まさに人事ビッグデータとなる。特性の波が似ている従業員を人工知能(AI)が即時に抽出し、戦略的な異動の判断に使うことも想定している。

 人事部門を統括する羽野佳之常務執行役員は「AIを活用することで、適切な人材を数千人の中から見いだすだけでなく、ポジションごとに『達成思考』と『論理思考』のどちらが求められるのかも分析したい」と期待を寄せる。

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