オリックスと会計ソフトの弥生が出資するアルトア(東京都千代田区)は12月7日、会計ビッグデータを基に人工知能(AI)で審査するオンラインレンディングを開始した。AIを使った与信モデルを採用する。申請から審査、契約締結から実際の融資までオンラインで最短で即日で完結する。膨大なデータをAIで分析することで、借り手に応じた金利や金額を自動で導き出す。
「アルトア オンライン融資サービス」として、短期あるいは小口融資を検討している小規模事業者の利用を想定する。「弥生会計」のオンラインサービスを契約中の約60万社に順次サービスを提供していく。
機械学習と自然言語処理を活用したAIの与信モデルを新たに構築した。構造化された匿名のデータ、複数の指標を組み合わせて開発した。弥生の利用者データと滞納情報を使ったという。

アルトアの与信モデルは、会計データを使用して企業の事業活動をAIが時系列で評価する。AIは取引1件単位でデータを精査して、現預金の推移、取引の整合性などをチェックする。旧来型の与信手法は決算情報など一時点でのサマリー情報が元になり、期中の取引は把握困難だった。
融資を検討する事業者にとっては、煩雑な書類整備や保証、担保が不要になるほか、最短で即日融資を受けられる(初回は本人確認で2~3日かかる。借り手となる法人は、弥生会計のデータ最低1期分が必要)。今後、他社会計ソフトによるデータや銀行の異動明細、請求書などの取引データなどを段階的に審査に利用していく予定だ。
融資金額枠は50万~300万円で、実質年率は3.8%~14.8%。借り手のスコアによって変わる。「(金利は)1桁後半がボリュームゾーンになると考えている。万単位の利用者と数百億円の融資残高を目指す」(アルトアの岡本浩一郎社長)と言う。
アルトアは、オリックスと弥生が共同で今年2月に設立したALTが前身である。2017年4月に与信モデル構築に着手した。協業先のd.a.t.のAI技術を使っている。同月に千葉銀行、福岡銀行、山口フィナンシャルグループ、横浜銀行と業務提携契約を締結し、金融機関におけるアルトアの与信モデルの活用を目指している。
中小企業を対象とした融資オンラインサービスでは、11月27日にリクルートファイナンスパートナーズ(東京都中央区)が法人向け資金繰りサービス「パートナーズローン」を開始。リクルートグループが保有する商取引データを活用し、ビッグデータ解析とAIによる与信モデルを構築した。現在は宿とホテルの予約サイト『じゃらんnet』に参画している企業の一部に限定してサービス提供しているが、段階的に多領域の企業にも拡充していく。
個人に向けたAI融資オンラインサービスでは、みずほ銀行とソフトバンクが共同出資するJ.Scoreの「AIスコア・レンディング」が9月25日開始した。個人の信用をAIが判断してスコアリングし、融資の条件を提示する。
今後API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)経由で別の会計ソフトによるデータとも連携し、融資対象を他社会計ソフト利用者や個人事業者へ拡大していく。