トヨタ自動車グループのトヨタIT開発センター(東京都港区、トヨタITC)は、自動車教習所向けの運転学習アプリを開発した。教官の運転をデータ化したお手本と比べて、教習生の運転を評価する。「教習所向けシンクロナイズド・ドライビング」として、1年後をメドに実用化を目指す。

 教習生が助手席に座って、シミュレーター装置のハンドルやブレーキ/アクセルを操作する。アプリを搭載するタブレットPCで、シミュレーター装置と教官が運転する実車から取得するデータから、両者の加速やブレーキ、ステアリング、ウインカーなどの操作情報を比較する。

教習生は左側の助手席に座り、シミュレーター装置のハンドルやブレーキ/アクセルを操作する
教習生は左側の助手席に座り、シミュレーター装置のハンドルやブレーキ/アクセルを操作する
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 両者の動作がシンクロしていればハンドルが青、していないと赤で警告を与える。設定したコースを運転した後、8割以上のシンクロと判断すれば「Good」、4~8割で「Normal」、4割以下で「Bad」と評価される。

自動車教習所向けの運転学習アプリの画面
自動車教習所向けの運転学習アプリの画面

 走行後に、各指標が教官とどの程度ギャップがあるのかをグラフに表示することができる。「教官から『もう少しブレーキを早く』と言われても、多くの教習生はどうしたらいいかわからない。これを定量的に示すことができる」(トヨタITC開発・調査部データドリブン開発グループの長田祐プロジェクトリーダー)。

 教官によっても経験や指導法が異なり教習生が混乱するという点も、アプリによって解消できる可能性がある。また、クルマを利用する営業担当を抱えるような企業が安全管理を徹底する手段にも活用できる。

 教官が運転するクルマの後を、教習生がクルマで運転して比較評価する「実車モード」も用意しており、実用化に向けて実装方法を検討している。

2年前のハッカソンから着想

 シンクロナイズド・ドライビングは、2014年の秋にトヨタITC、トヨタ自動車などが開催したハッカソンの提案作品がベースとなっている。

 子供は楽しみながら交通安全を学べ、大人は安全運転を心がけられることを提案した。車内で子供が使用するマイコン内蔵の専用ハンドルからスマートフォンに操作情報を送信。クルマの情報を整備用の情報をやり取りするOBD2のポートから取得してシンクロ率を表示するというアイデアを提案し、最優秀賞となった。

 アプリはITベンダーのSky(大阪市)と開発した。現時点ではWindowsのタブレットPCに実装したが、iOSやAndroid OSにも対応していく。また、実用化に向けてはトヨタ系の部品メーカーなどと連携してハードを実装する考え。現在はハンドルやアクセル、ブレーキのシミュレーター装置を助手席に設置しているが、それらの操作をスマホやタブレットなどで代替できるのかも検討する。

 実車からの情報取得の方法も検討課題の1つだ。現在はOBD2から情報を取得しているが、トヨタは携帯電話の通信機能を内蔵する車載通信機(データ・コミュニケーション・モジュール、DCM)を通じて全世界のクルマの走行情報を取得、管理する仕組みの実装を進めている。トヨタは2020年までに日本・米国市場で販売されるほぼ全ての乗用車に搭載するとしており、DCMを活用していく可能性もある。

 こうした模範運転のデータを集めることで新たな価値も生み出しそうだ。長田氏は「蓄積したデータを自動運転の支援に活用できるかもしれない」と将来展望を語る。