本誌「第1回 データ活用先進企業ランキング」の販売部門で1位になった三菱電機。家電量販チャネル経由のルームエアコンでデータに基づく精緻な需要予測を実施し、最需要期を逃さず、在庫の適正化を図る。

 「ルームエアコンについては毎週、2週後の需要を予測して生産台数を確定するなど、適時適材適所で販売できる体制を確立している。毎年夏に訪れる需要のピークを確実に捉えて、販売機会損失を極力抑えている」

 こう話すのは、三菱電機静岡製作所営業部の久保田健・ルームエアコン営業統轄部長。「ルームエアコンは需要の変動要素が大きく、景気、天気、(社員の)やる気に起因する」と解説する。

 エアコンは、気温や湿度などの天候に左右される季節商品。毎月公表される国内全体のエアコンの販売台数(全需)や日々得られる量販店のPOS(販売時点情報管理)データ及び在庫データ、天候に関するデータなどをフル動員して、需要を予測している。

 長期的にはエルニーニョなどを考慮して1年の需要動向を捉えつつ、毎週2週後の需要を予測。適切な時期に適切な場所で適切なエアコンを販売して機会損失を極力減らし、過剰な在庫を持たないように施策を実行している。的確な施策を講じるうえでも、データが欠かせない。

 今年は、6月の気温が低く夏物がなかなか立ち上がらなかった。地域別に見ると九州の梅雨明けが遅くなるなど、年や地域によって販売台数はアップダウンする。ちなみに最盛期の夏も、全需は1カ月で40万台弱の規模で上下に振れる。

需要がピークになるXデーを探る

 ルームエアコンの需要予測で最も重要なのが、1週間で全需が30万台前後になるような山(Xデー)を特定することだ。そのために、最高気温と湿度で算出する不快指数を絶えずチェック。不快指数80%以上が何日か続くと、ピークを迎える。

 今年は、7月第2週から第3週にかけて不快指数が80%を超える日が続き、第4週に需要のピーク到来を予想。その後不快指数は80%を超えるものの継続的に上昇せず、前週を下回る台数になった(下のグラフ)。しかし、7月第3週から8月第1週にかけて大きなピークはないものの需要全体は底上げされた。また、大きなピークが発生する場合としない場合の両方の販売台数を予測していたため、生産調整も柔軟に対応できた。     

国内全体のルームエアコン週別販売台数推移(イメージ)
国内全体のルームエアコン週別販売台数推移(イメージ)
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 ちなみに1週間ぐらい続いた2013年は、7月の第2週に48万台が販売された。猛暑だった2010年は7月第4週に45万~46万台売れた。こうした兆しを事前に察知して生産に落とし込む。

 三菱電機の強みは、国内向けルームエアコンの全数を静岡製作所で生産していること。だから「2週前に生産を確定して1週間の生産微調整によってジャストインタイムを実現できる。一部海外で生産していた時期もあったが、海外拠点で作る場合は、2カ月前に生産を確定しなければならず、変化する需要に対して柔軟に対応できなかった」(久保田統轄部長)と言う。

 最盛期の生産ラインはフル稼働状態にあるため、予測を超える需要に対しては時間外で調整する。基本的にはかなりの部分を作り込んでおき、過不足を調整して販売の機会損失を軽減する。

 6月末が仕込みが最盛期に入っていくタイミング。各量販店の流通在庫とメーカー在庫はほぼ同じになる。メーカー在庫の内訳は、静岡製作所が1に対して、全国8拠点の流通センターが2の割合。

 2010年ぐらいから販売会社の三菱電機ライフネットワークと量販店はシステム的につながっており、代金のやり取りデータやPOSデータを直接把握している。主要5社で家電量販チャネル経由で販売されるルームエアコンの8割以上をカバーしている。家電チャネル経由の販売はルームエアコン市場の約6割。約4割は住宅設備チャネルになり、三菱電機、ダイキン、パナソニックの3社が強い。3社のうち1社が供給不足になると、売れ行きが大きく変わるので、家電量販チャネルとは違って動きをつかむのが難しいという。