「OK、グーグル、行ってきます」。AIスピーカーの「Google Home」に話しかけると部屋のシャッターが閉まり照明が消え、エアコンの電源が切れる。帰宅時に玄関ドアを開けると、シャッターが上がり照明が点灯し、エアコンがつく。LIXILはシャッターやドア、照明などの建材がIoTでつながるシステムを12月13日から東京ビッグサイトで開催している「高性能建材EXPO」で展示した。LIXILによると、建材とAIスピーカーが連携したシステムは国内初という。
建材や住宅設備機器と、人感や赤外線といったセンサー類を連携させたLIXILの技術で実現している。ドアの開閉など住人の普段の生活行動がトリガーとなり、シャッターの開閉や照明のオンオフなど複数の動作となる。冒頭の帰宅シーンは、ドアに搭載されたセンサーが開閉を検知し、シャッターに搭載されたセンサーが信号を受け取っている。
建材や設備が住人の動きを察知
玄関ドアやシャッターといったさまざまな建材や給湯などの設備がIoTに対応することで、機器の操作だけでなく、住人のニーズに合わせたサービスや機能を実現できる。例えば外出先で鍵の閉め忘れが気になったら、スマートフォンで施錠状況を確認、うっかり閉め忘れてきたら遠隔操作で電子錠なら施錠できるといったことだ。
安心や防犯上の機能では、例えば子供が帰宅してドアを開けるとその様子の画像とともにメールで通知したり、不審者が窓から侵入しようとするところを同様に撮影してアラート通知したりするなどが可能になる。見守りの機能もつくれる。離れて暮らす年配の親の住宅で「トイレのドアの開閉が一日に一度もない」「水の利用がない」ということが通知されれば、異変があったと気づける。
これを可能にするのが、蓄電池や給湯設備などの設備機器や家電の操作を束ねるホームコントローラと、人感センサーやドア窓センサーを束ねるリンクコントローラの2つの制御機構をルーターで連携させて、アプリで一括で管理する仕組みだ。
Wi-Fi通信には家電制御やデータのやり取りの通信プロトコル「エコーネットライト」規格を採用している。これによりLIXILの製品だけでなく、他社の製品とも連携する。
展示に先立ち4日に開催した記者発表会において、LIXIL常務役員でLIXIL Housing Technology Japan ZEH推進事業部長の野澤徳則氏は、現段階ではアイデアとしながらも今後の展開として「病院の人間ドックに行かずとも自宅のトイレで健康をチェックする、ヒートショック(急激な温度変化)により容体が変化した場合、異常を検知して浴槽の水を抜いて溺れるのを防ぐなどが考えられる」と述べた。医学や温熱環境の研究を、センサー取得したデータで裏付けて、住人の健康に寄与することにつなげたいとする。
IoTシステムはルーター、リンクコントローラーとホームコントローラーの基本構成の初期費用で10万円程度を想定する。現時点で月額利用料は未定である。将来的には新築戸建て1万棟への利用を見込む。
東芝情報は住環境を簡易に測れるセンサー
住まいに使われる建材を広く連携させることを狙うのがLIXILのIoTシステムだとすれば、機能を絞ったIoTシステムのコンセプトを展示していたのが東芝情報システムだ。
手のひらに収まるサイズの温湿度センサーと、対応するゲートウェイを住宅の浴室などに設置し、温湿度のデータを蓄積。データを機械学習により分析して室内環境を予測する。例えば浴室と脱衣所の温度差が激しければ「浴室を暖めてください ヒートショック注意」という注意喚起を促すメッセージを配信する。住人はそのメッセージをスマートフォンやタブレットで確認できる。
ターゲットとする利用者は主に施工主で、リフォーム需要を掘り起こすための営業支援ツールとして想定している。例えばお年寄りのいる住宅で、今まで感覚的にしか分からなかった浴室の内外で生じる温度差を、一定期間データを取得することで提示できる。分析応用分野として換気や気密性能などがある。データ分析をハウスメーカーや家電メーカーなどを利用者として広げたいとする。
中国BOEは店舗用の多機能ディスプレー
一方液晶パネル大手の中国・京東方科技集団(BOE)の日本法人は業務用の「IoTインタラクティブ透明ディスプレイ」を展示した。IoTのタッチスクリーンとしてテレビ表示やインターネット接続、レシピ検索、正面にいる人の体温や脈拍を計測するセンサーなど複数の機能を実現している。
会場ではドアに同ディスプレーを組み込んだ冷蔵庫を展示していた。小売り店舗への導入を想定し、パートナーである冷蔵庫メーカーと効果を検証している。顧客の意向を聞いて、別途電光掲示板と組み合わせているという。数台まとめて導入してサイネージのような使い方もできる。