自動車レースの国内最高峰カテゴリーであるスーパーフォーミュラに参戦するホンダ系のチーム「リアルレーシング」は2016年シーズン、データ分析システムを導入した。分析の迅速化、適切な指標の可視化などにより、まずはラップタイム分析によってタイムを縮める成果を上げた。

 「レースの勝敗を分ける基本はデータだ」

 チーム監督であるリアル(東京都港区)代表取締役の金石勝智氏はこう話す。

スーパーフォーミュラに参戦するホンダ系のリアルレーシングチーム<br>(C)REAL RACING
スーパーフォーミュラに参戦するホンダ系のリアルレーシングチーム
(C)REAL RACING

 「例えば、ドライバーがコースから戻ってきて『1コーナーはアンダーステアです。曲がりにくい』と言うがそのフィーリングはどこから来ているのかをデータと突き合わせて分析し、どうすれば速くなる確率が高まるかを検討する」(金石氏)

 スーパーフォーミュラは、各チーム共通の「PI」と呼ばれるデータ収集機器をクルマに搭載している。ここからスピードの加減速、横や上下方向の加速度、ブレーキ圧、アクセル開度……様々なデータが入手できる。スーパーフォーミュラのクルマは一部コースでは最高時速300kmを超えるが、センサーの塊が走っているとも言える。

 しかし、そのデータ活用は簡単ではない。

 「エンジニアはすべてのデータを見てまとめようとするが、見る視点が違うと改善には結びつかない」(金石氏)。そして 「レース間の限られた時間で解析して、どこまで改善できるか」(所属ドライバーの塚越広大氏)。

 分析に使えるのは、例えば練習走行と予選レースの間の1時間。多数のデータを試行錯誤しながら分析して車体の設定やドライバーへの助言といった対策につなげるのは難しく、企業のデータ活用の現場以上にリアルタイムな決断を支援するシステムが必要だった。

注力区間をデータで判別

 そこでリアルレーシングはアビームコンサルティング(東京都千代田区)へ依頼して、2016年7月の第3戦のころから独自のデータ分析システムの開発を始めた。

 アビームはまず、PIからどんなデータが得られるのか、多数のデータ項目の値は何を意味するのか、その中からどんなデータと情報があるといいのかをエンジニアらから聞き取った。そのニーズを反映して分析システムを9月の第6戦から稼働させた。統計分析に向くプログラム言語「R」で開発した。

 2016年は最後の2戦だけでの活用となったが、塚越ドライバーは最終戦の鈴鹿のレースで大きな手応えを感じたという。

ドライバーやエンジニアが走行の合間にデータをチェックする (C)REAL RACING
ドライバーやエンジニアが走行の合間にデータをチェックする (C)REAL RACING

 レースはコースを4区間に分割して、全車のラップタイムが公開される。そこで練習、予選といった走行ごとに全チームのデータを分析するようにした。すると、タイム差がついた原因はどの区間にあったかがすぐに分かる。

 単に自車が遅い区間を速くしようと考えるのではなく、大きなタイム差が付きやすい区間の改善策を考えることで論点も集中する。

 さらに自車については、PIからより細かい区間のラップタイムを取得できる。そこで、大きな差が付きやすい区間については、どう短縮すればトップとのタイム差を縮められそうかの戦術を練る。

 最終戦では「ここがもう少し(速度を)上げられないかと意識してクルマを作ったり走ったりしたらペースがとても良かった。データがいい結果につながった」と塚越氏は実感している。

 来シーズンは、ピットインするタイミングや車体の設定の判断など、データ分析をより広範囲に活用していく方針だ。

 塚越氏は「車高1mm、ウイングの1度で結果が変わる。ファンにデータで伝えられれば興味を持ってもらえるのではないか」と、現場の勝負へのこだわりをデータで表現することで、ファン拡大に結びつけたいとの期待も込める。

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