現実の空間と仮想の空間を融合させて、現実の世界と仮想の物体がリアルタイムに影響し合う空間を作り出す複合現実技術。コンピューター上に人工的な空間を作り出してあたかもそこにいるかのように感じるVR(Virtual Reality=仮想現実)と、現実の空間に仮想の情報(物体など)を映し出して現実の空間を拡張するAR(Augmented Reality=拡張現実)の中間に位置づけられる。VRはソニーがゲーム機に採用している。ARで有名なのは「ポケモンGO」だ。

 MRの事例では、日本マイクロソフトが2017年1月に国内の法人と開発者向けに提供開始した「HoloLens」がある。目の前の現実世界の中に、3次元の仮想物体であるホログラフィックを重ねて表示させる。現実の世界と仮想の世界を融合させて、それぞれの長所を生かしている。現実世界が見えている状態のまま、ホログラフィックも見えて操作できる。

 例えば、音声やビデオを使って遠隔地の同僚と同じ複合現実の世界を共有しながらオンライン会議などができる点が大きな特徴と言える。

 HoloLensを活用することで、建設事業者の様々な課題を解消しようとしているのが、小柳建設(新潟県三条市)だ。同社は、国内でのHoloLens発売前から、米マイクロソフト本社および日本マイクロソフトと連携して、コンセプトモデルを開発してきた。

 今回のコンセプトモデルでは、「設計図を3Dで可視化しながら、検査に必要なデータや文書を一緒に格納。必要な時にすぐ表示できる仕組みを開発している」(両社のリリースから)という。

 そのほか、トヨタ自動車などもMRの活用に取り組んでいると言われている。

 MRは、医療分野での活用も期待されている。ソフトバンクグループのリアライズ・モバイル・コミュニケーションズ(東京都港区)とモリタ(大阪府吹田市)は、MRを活用した歯科治療シミュレーションシステムを開発した。歯学教育現場で行われる歯科治療のトレーニング用に開発されたもので、施術者が仮想空間のCG画像のガイドを見ながら、現実空間の実習模型に治療を施せる大きな利点がある。歯科以外の医療の現場でも、手術支援や医師のトレーニング、患者への的確な説明などで、MRは大きなインパクトをもたらす可能性がある。

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