冷蔵庫向けの冷凍機を製造する前川製作所(東京都江東区)は、人工知能(AI)を活用して故障を予知する保守サービスの開発に取り組んでいる。昨年10月に試験的に導入し、効果が認められたことから今年10月に対象を拡大した。
主力の冷凍機「NewTon(ニュートン)」向けの保守サービスとして提供する。ニュートンは物流拠点などの大型倉庫の冷蔵設備で使うため、故障すると顧客のビジネスへの影響が大きい。このため2008年の製品発売時点から遠隔監視サービスを提供し、異常が認められたら保守担当者が駆けつけるようにしていた。
ノンフロン型ということで環境意識の高まりから出荷が予想を上回り、監視台数が1000台を超え情報の把握が難しくなりつつあった。顧客の所在地や施設の置かれた状況によっても、判断基準が異なる。
こうしたなか安川情報システムからセンサーデータの機械学習が可能なクラウドサービスの提案があり、試してみることにした。吸入圧力、吐出圧力、モーター回転数、圧縮機の振動、冷却水の温度など約30の指標を入力し、定常状態を学習したうえで、それとの乖離を分析した。
前川製作所 NewTon事業ブロック生産G専門リーダーの八下田新一 守谷工場副工場長は「過去データを入れてみたところ、実際に故障の2カ月前に予兆をとらえていた。意外と使えると判断した」と言う。
顧客の設備でおよそ1カ月間の稼働で定常状態を把握し、その後、異常の予測を始める。日本の場合、四季があるのでより精緻に予測するには、1年間の稼働で定常状態を学習する必要があるという。
特定できないが何か起きている
約30の指標をすべてあわせて定常状態か判定し、乖離した場合には担当者にアラートが出る。それをもって、保守部品を発注したり、顧客にメンテナンスの提案をしたりする。

例えば、図のグラフは最初の兆候の山で実際にバルブが故障していたことが分かった。解離度を見ているので、2つ目の兆候のように性能を上げた場合にも故障と同じように表示される。3つ目の兆候は現時点で原因が特定できていないが、何か発生する可能性があるという。
八下田副工場長は「始めて1年なので、すべての事象を把握できていないが、様子を見ると収まる場合もある。ケースを蓄積し、1カ月や3カ月後に故障の可能性があることを顧客に的確に伝えていきたい」と語る。
現在のところ一部顧客の50台を対象に予測サービスを運用しているが、試験段階のため無償で提供している。将来的には付加価値の高いメンテナンスサービスの費用に盛り込んでいく考えだ。