データ活用に秀でた企業を明らかにするため、本誌は初となる「データ活用先進企業ランキング」を発表した。ランキングは4つの部門別で作成し、積水ハウスが開発と生産の2部門で1位となった。

 データ活用の先進企業がどのようなシステム、組織体制や、投資方針で活用しているかを明らかにすることで、データ活用への投資強化を検討する企業に向けて、今後進むべき方向を示したい──。

 本誌はそんな目的で「第1回 データ活用先進企業ランキング」を作成した。上場企業・有力未上場企業を対象に実施したアンケートを基に、データ活用による実態の「把握」、それに基づく「施策」状況の2項目をスコア化。両状況を基に、平均500、標準偏差100になるように偏差値化した総合スコアを算出し、ランキングを作成した。

 その結果が下表である。

第1回 データ活用先進企業ランキング
第1回 データ活用先進企業ランキング

 開発部門では積水ハウスが総合スコア681.2で1位となった。2位の損害保険ジャパン日本興亜とは6ポイント差で、4部門のランキングの中で最も僅差となった。そして、生産部門も積水ハウスが810.1ポイントで1位。同社は全社の業務プロセスでデータを連動させるシステムが効果を発揮した。

 販売部門では三菱電機が755.3ポイントで1位。在庫と販売状況を把握し、過不足を考慮し、生産部門へフィードバックすることで、社内の在庫状況を適性化させている。社内外のデータを掛け合わせて分析をしているのが高評価のポイントだ。

 そしてサポート部門では、富士フイルムホールディングスが757.6ポイントで1位となった。消費者向け商品のFAQ(よくある質問と回答)における人工知能(AI)の活用が特長。

 なお、本ランキングにおける把握スコアは、データによる販売・利用状況や社内の人員リソースなどに対する「把握状況」「把握・予測の精度」「把握のスピード」などの回答、施策スコアはデータを基にした「施策内容」「施策までのスピード」などの回答から算出した。データ活用による効果は、データ活用の貢献分だけを切り分けて算出しにくいため、評価対象としていない。ただ、ランキング上位企業は実際にデータ活用が成果に結びつく傾向が明らかになっている。

 本調査は、日経ビッグデータと日経リサーチが共同で9月11日から11月6日まで実施した。4264社に調査票を送付し、221件の有効回答を得た。全社の活用状況・体制を尋ねる必須回答の調査票に加えて、開発からサポートの4部門の調査票を個別に用意し、データ活用状況に応じて任意の調査票に回答してもらった。

 それではトップ企業の取り組み内容を具体的に見ていこう。

【トップ企業の取り組み】積水ハウスは全社基盤、富士フイルムHDはAI

 積水ハウスは全4部門でトップ10に入り、そのうち開発と生産の2部門でトップに輝いた。これを支えているのが、2014年にIT部門が主導して導入した全社プロセスにおけるデータの連動システムである。

積水ハウスは情報の一元化で成果
積水ハウスは情報の一元化で成果

 同社が顧客の建設現場で使う鉄骨などは、邸ごとに異なる。量産品のように見えるが、構造やボルトの位置などは邸ごとのカスタマイズ品であり、設計データはまさにビッグデータである。

 新しいシステムによって、顧客に提案する際に設計の詳細データまで反映させることが可能となり、価格や納期を高い精度で提示できるようになった。その一方で、生産や開発部門では提案段階など最前線の情報を把握できるようになり、調達や開発業務に活用できる体制が整った。

2~3カ月先の出荷も部材単位で分析可能に

 顧客の受注が確定した段階で設計データが確定し、生産に必要な部材の詳細データまで落とし込まれる。「2~3カ月先の出荷についても、部材単位で分析できるようになった」(荻原悟司生産部部長設備物流グループ長)。従来、部材単位の分析が可能なのは2週間程度先までだった。

 生産業務のサプライチェーン管理では、生産や納入に必要な部材データの把握や予測を精緻にすることで、配送に使うトラックの台数を約2割減らした。

 山口工場設備情報部の谷口勝章部長は「コスト削減で物流改革を進めてきたが、ドライバーの不足や運賃高騰など新たな課題にも対応することができた。取り組んでいなければ大変なことになっていた」と胸をなで下ろす。

 まず、顧客の需要がどのエリアにあるのかのデータを分析することで全国に7カ所の物流拠点を新設。物流拠点を出たトラックが複数の顧客の現場や調達先を巡回し、可能な限り資材などを積載した状態で稼働できるよう、データを基に日々の配送計画を策定している。過去の配送、エリアごとの平均速度、積み込みや荷下ろしの作業時間など様々なデータを考慮し、定期的にシミュレーションを行って条件を見直しており、さらに現場のドライバーの声も加味して最適化を進めている。

生産業務のサプライチェーン管理(SCM)
生産業務のサプライチェーン管理(SCM)

 配送拠点には、翌日以降のプラン、同じ建設現場に他のどのドライバーが向かうのかなどの情報が分かるタッチパネルモニターを置いた。「現場は道が狭かったりなどでドライバー同士の連携も必要。こうしたデータを共有することで、気持ちよく働いてもらいたい」(谷口部長)。

データでインダストリー4.0実践

 静岡県の掛川駅から車で約30分の場所に、積水ハウス静岡工場がある。同工場ではこれらのデータをIoT(Internet of Things)として活用し、ドイツが国を挙げて進める次世代製造業政策の「インダストリー4.0」同様の取り組みを実践している。

 同工場の最新ラインではロボットや自動搬送車120台以上が稼働。ここで顧客の邸ごとに異なる設計の骨組みとなる部材が、流れ作業で完成していく。業界でここまで自動化しているケースは珍しいという。

静岡工場ではロボットとセンサーを活用し、邸ごとに異なる部材を自動で生産する
静岡工場ではロボットとセンサーを活用し、邸ごとに異なる部材を自動で生産する

 ロボットにはレーザーで位置を測定する独自のセンサーを装着した。部材の加工データと突き合わせることで、ロボットの位置合わせにズレがないかどうかをその場で判定。ロボットの設定をリアルタイムに修正する。「加工がミリメートルの単位で合っていないと、建築現場で各部材を組み合わせられない」(静岡工場設備情報部の藤田貢生部長)。

 ロボットは工場の熟練工の作業をデータとして覚え込ませた。「この形状の部材を扱う場合、熟練の作業者はどこに着目してどう位置を決めるというパターンを何百種類もデータ化していった。目標とする状態に到達するまで約半年かけた」(生産部設備物流グループの石本栄貴課長)。

 ロボットに入力する部材ごとの加工データは、設計データから直接生成する。受注情報を基に生産するので、完成品の在庫を大幅に削減した。建設現場に運ぶトラックに積載する際に最適な組み合わせや順番も考慮して生産していく。

 同社は「同じ受注でも利益の出やすい筋肉質の体質を目指す」として全社でデータの有効活用による予測と最適化を進める。2016年3月期は連結売上高1兆9200億円、同営業利益1600億円、同営業利益率9.1%と、いずれも過去最高の見通しだ。

富士フイルムHD、顧客対応にAI

 サポート部門1位の富士フイルムホールディングス(HD)はデジタルカメラなどBtoC商品で機械学習ベースのAIの活用を始めた。Webサイトにおける顧客の行動を把握するシステムをIT部門とビジネス部門が連携して今年9月に導入した。

 顧客がサイトで製品の使い方や仕様などに関する質問を入力すると、最適なQ&Aを表示するように学習する。提示した答えに満足したかを答えてもらい精度を上げていく。

 AIによるQ&Aシステムは顧客満足度の向上と対応コストの削減の両立を目指す。例えば、問い合わせフォームを通じた質問でも、適切なものがあれば担当者に送信せずQ&Aを表示する。問い合わせ窓口の対応コスト引き下げを狙っている。

 事業会社である富士フイルムはこうした現場のビッグデータ活用を推進する基盤や体制の整備に2015年から乗り出している。

 Q&A利用履歴のデータなど様々なフォーマットの情報を蓄積して分析できる「データレイク」のインフラを10月に稼働させた。70テラバイトものデータ容量があり「画像やソーシャルなど非定型データを蓄積し、ビジネス現場と連携して分析で新たな知見を見いだしたい。利用状況に応じて容量は拡張していく」(富士フイルムHD経営企画部IT企画グループ横山立秀グループ長)。

 一方で研究開発部門は今秋にデータサイエンティストを集めたチームを正式な組織とした。分析や戦略企画、データベース構築、ITなどデータサイエンスに必要な人材約10数人で組織した。富士フイルムR&D統括本部先端コア技術研究所の上野仁志研究マネージャーは「ビジネス現場と連携して、IoTや新しい研究のトライアルに取り組んでいく」と位置づけを説明する。

富士フイルムHDはデータレイクを導入
富士フイルムHDはデータレイクを導入

 積水ハウスも富士フイルムもIT部門や研究開発部門など全社組織がデータ活用を支援する体制を整えている。データが増大し分析のノウハウも必要になるため必要不可欠な取り組みになりつつある。

【上位20社の傾向】現場への人材配置と教育の実施が違い

 データ活用先進企業と下位企業の違いは何か。総合スコア上位20位までの上位企業と下位の企業の間では、データ分析の組織体制や課題意識などで違いが見られた。顕著なのが、経営層や本社部門によるデータ活用の推進策として、上位企業は「各部門に、データ分析の専門家を配置している」比率が高いことだ。

 データ活用推進策として、「データ活用推進の専門部署を設置している」企業もある。特に販売部門では上位20社が40.0%に対し、下位企業は20.0%にとどまり差がついたが、それ以外の部門では数ポイントの差にとどまった。データ専門部署の設置より、各部署への専門家を配置することが上位企業の特徴だ。

各部門にデータ分析の専門家を配置している比率
各部門にデータ分析の専門家を配置している比率

 また、「経営の意思決定に結びつくデータを提供するための取り組みで、効果を上げたものはありますか」の問いにおいて差がついたのは「データ活用研修・勉強会を現場レベルで実施」。上位企業は開発や販売部門で45.0%、最も低いサポート部門でも35.0%が実施しているのに対し、下位企業では最も高い開発部門でも20.4%にとどまった。

 現場重視の姿勢が、データ活用の高度化のために有効と推測される。

 最後にデータ活用の結果得られた成果について、上位20社で最も高かった項目を部門別に見ていこう。

 開発部門では「商品の質向上」(上位75.0%/下位40.7%)、生産部門は「製品の品質の改善」(上位71.4%/下位26.5%)、販売部門は「顧客数の増加」(上位70.0%/下位43.8%)、サポート部門は「問題の発生率低減」(上位75.0%/下位28.2%)と「顧客満足度の向上」(上位75.0%/下位46.2%)だった。データ把握と施策が高度な企業は実際に成果も得ている。

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