店舗サインやディスプレーを手掛けるクレスト(東京都千代田区)は、画像解析カメラを利用して、店舗前の人の通行量や、店頭ディスプレーに対する視聴者の関心度や滞在時間などを計測するシステムを開発した。取得したデータを分析して、品揃えを変えるなどの工夫で収益改善に活用している。

 クレストは洋服と雑貨、植物を扱う「IN NATURAL」を8店舗運営しており、7店舗に同システムを設置している。1店舗当たり5~9台で計50台の解析カメラを導入。POS(販売時点情報管理)と連動させてデータを分析している。永井俊輔代表取締役社長は「ウインドーディスプレーの価値計測は今までできなかった。ウエブサイトならページビューやコンバージョン率など当たり前に計測できることが、リアルの店舗で実現できるようになったことは大きい」と取り組みの背景を説明する。

視聴とPOSの相関を分析

 ディスプレーの効果測定には、まず、動いている物体を検知するカメラ機能で店舗前の通行量を測定。足を止めディスプレーを眺める人を顔の向きで検知して、ディスプレーを視聴していると判断する。この人数を通行量で割れば「視聴率」、入店した客数(入店量)を通行量で割れば「入店率」が算出できる。滞在時間なども測れる。これによって、店舗ごとに視聴数や入店率、そしてPOSデータを重ねて分析し、改善が可能となる。

 大型商業施設「ららぽーと海老名」内のIN NATURALの店舗は、立地がよく集客力もあるが、売り上げは期待を下回っていた。「通行量は変わらないのに入店率が下がれば、店側の品揃えやサービスに問題があるのではないか」との仮説が立てられる。従来は「店舗前の通行量が減ったのでは」ぐらいまでしか把握できなかったという。

IN NATURAL海老名店。客の動線から、赤枠の部分が歩行中の客が見ている場所と分かり、注力ポイントになった
IN NATURAL海老名店。客の動線から、赤枠の部分が歩行中の客が見ている場所と分かり、注力ポイントになった

 最終的な解析の結果、客の視認ポイントが店側が考えていたものと違っていた。正面から見る前提でディスプレーを組んでいたが、実際には客が正面に来た時には目線は隣の店舗に既に移り、素通りしていた。対策として、客の目に入る角度にブランドのコンセプトである洋服と雑貨、植物の3点を置いて季節感を表現したコーナーに変更。陳列や商品構成を変更し、売り上げが2割ほど向上したという。

 クレスト システムソリューションディビジョンの江刺家直也ディレクターは「データを見ているから、店ごとの運営をカスタマイズできる。ただ、分析結果を基に購買担当や店のスタッフと試行錯誤しながら改善することは欠かせない」と言う。

IN NATURAL海老名店における2017年10月の視聴数(実線)と売上金額。相関が見られる(クレスト資料より)
IN NATURAL海老名店における2017年10月の視聴数(実線)と売上金額。相関が見られる(クレスト資料より)

 千葉県柏市の店舗では、2015年10月のオープン以来、視聴率や入店率の指標が上がるよう、データを観察しながら本部と店舗で仮説構築と検証を繰り返した。1年目は月400万~500万円台だった売り上げが、同800万円台となりその水準を維持している。

 クレストは同システムを「ESASY(Eye Sight Attention System、エサシー)」として他社にも販売しており、6社が採用しているという。映像解析のプラットフォームとして、フューチャースタンダード(東京都文京区)の技術を採用している。

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