東日本旅客鉄道(JR東日本)は11月20日、人工知能(AI)を利用した無人コンビニの実証実験を期間限定で始めた。IC定期券「Suica」とスタートアップのAI技術を活用することで、決済の迅速化と人手不足に対応する次世代店舗のあり方を探る。

入店時にSuicaなどのICカードをかざす
入店時にSuicaなどのICカードをかざす

 JR大宮駅のコンコース内に特設の店舗スペースを設けて1週間限定の実証として実施した。画像のディープラーニング(深層学習)のAI技術を提供したのはシステム開発やコンサルティングなどを手掛けるサインポストである。

 利用者は実験店舗の入り口でSuicaなどのICカードをかざして入店する(上の写真)。入店後には天井に取り付けたカメラで撮影する画像データを基にしてAIが人物を特定、店内での商品取得や決済と結びつける。服装や歩き方など顔以外の特徴で個人を特定するという。

陳列棚には商品を管理する小型カメラがある
陳列棚には商品を管理する小型カメラがある

 陳列棚には商品の至近に小型カメラが取り付けてあり、どの商品が顧客の手に取られたのかが分かる(上の写真)。商品はパッケージのデザインを事前にAIに学習させている。

 AIが入店した顧客の仮のIDとそれぞれの商品を紐付けている。出口の近くにあるレジの前にいくと、顧客が手に取ったと判断した商品をディスプレーに表示する(下の写真)。顧客が一覧を確認して入店時にかざしたSuicaで決済し、退店する。この際、個人を特定する情報は蓄積しないという。

レジの前に行くと手にした商品がディスプレーに列挙される
レジの前に行くと手にした商品がディスプレーに列挙される

 顧客は実際に商品を購入できるようにしているが、あくまでも実験である。複数の顧客が売り場にいると個別の認識ができなくなる恐れがあるため、入店は1人に限定していた。精度を向上させて最終的には「複数の客が買い回っても認識し、個別に決済できるようにする」(サインポスト イノベーション事業部の山野文子氏)。

 AIによる認識は個々の人物の特徴のほか、「足が2本ある」などから人間としての把握もしている。このため、ロングスカートを着た女性を人として認識できなくなる場合もあるという。ただ今回の実証でもAIが学習しており、「判定の精度を向上させていく」(山野氏)との考えだ。

天井に取り付けたカメラ
天井に取り付けたカメラ

 今回のようにカメラ画像を活用したアプローチは、商品にICタグなどを付けなくて済む。タグを取り付けるコストの削減のほか、弁当などを電子レンジで温める場合にも外さなくていいというメリットがある。顧客の画像を撮影するカメラは「数千円程度のWebカメラでも利用できる」(山野氏)という。

 サインポストが今回の実証に提供した「スーパーワンダーレジ」は、JR東日本が開催したベンチャー企業と協業するためのアクセラレータープログラム「JR東日本スタートアッププログラム」で最優秀賞を獲得している。

 サインポストはスーパーワンダーレジを来年以降実用化することを目指している。JR東日本との実験では実施していないが、人物の年齢や男女を判別することも可能という。例えば、酒やたばこを購入する際に顧客の年齢を推定し、未成年と思われる場合には店員などにアラートを出すといったことに活用できる。