不動産情報サイト運営のLIFULL(ライフル)は、人工知能(AI)を活用して、自社の顧客の行動を精緻に予測する機能を今年11月までに導入し、運用を始めた。AI予測分析サービスを提供する台湾エイピアのWeb行動履歴などとマッチングして、自社の顧客の行動や置かれた状況などを推測する。

 不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」などで、自社の顧客がどのような意図で情報を閲覧しているのかより精緻に判断することを目指す。例えば、顧客が単にマンションを探しているのではなく、大学4年生で就職に伴って探していることが分かることを目指している。

 ライフルのCDO(Chief Data Officer)でLIFULL HOME'S事業本部グループデータ戦略部の野口真史部長は「当社のサイトで検索している方が、直近の住み替えなのか、先のための情報収集なのか、事前に発見するのは難しい。ディープラーニング(深層学習)で解析することで成約率の高い顧客を抽出したり、自社のマーケターにはない知見を得たりしたい」と解説する。

Web閲覧やスマホ利用の情報を追加

 具体的には、台湾のAI企業Appier(エイピア)が開発したAI搭載の分析予測ツール「AIXON(アイソン)」を導入。ホームズを訪れる自社の顧客データと、エイピアが持つ7000万~8000万人のユーザーの行動データを掛け合わせて分析を行う。

 ホームズのサイト上での行動データは、どういう物件をいつ見たのかというデータが主である。AIXONはユーザーがWebを閲覧したクッキー情報やスマートフォンのアプリの利用などを行動データとして蓄積している。それらとライフルが持っている顧客IDを一致させることで、就職で家を探しているといったことを予測する精度が上がる。

 例えば、「来年3月に大学を卒業して4月から社会人生活をスタートするので、会社の近くでワンルームを探している」「近々に結婚するので、比較的床面積が広いマンションを探している」といったことが推測できるようになれば、それにあったレコメンドを行うことで、成約率を高めることが可能という。

 住み替えにとって大きなポイントが「物件を探す期限があるかないかという点である」(野口部長)からだ。実際、今年11月から、成約率が高いと推測できる顧客に対し、最適な物件広告を出すようにしている。

AIXONの画面イメージ。不動産物件の内見予約などコンバージョンの可能性がある顧客を抽出できる(数値はサンプル)
AIXONの画面イメージ。不動産物件の内見予約などコンバージョンの可能性がある顧客を抽出できる(数値はサンプル)

 属性を拡張したうえで、成約率などのKPI(主要業績評価指標)を向上させる機械学習の分析も可能だ。

 ライフルのこれまでの成約情報を教師データとして入力して学習。「XX地域にある価格帯XXX円の分譲マンションを購入する可能性がある広告の受け手(オーディエンス)を抽出するといったことが可能となる。例えば、画面は不動産物件の内見予約などコンバージョンの可能性があるオーディエンスを23万8247人抽出したことを示している。平均で26.53%がコンバージョンする可能性があることも算出している。