ジェイアイエヌ(JINS)は顔写真から似合うメガネを提案する人工知能(AI)「JINS BRAIN」を開発し、11月11日から提供を始めた。JINS社員3000人が深層学習(ディープラーニング)の“教師役”となり、メガネを掛けた延べ6万人の画像を4段階評価して学習させた。利用者は従来の疑似試着サービスの約10倍に達している。

 学習に当たってはJINS社員500人から顔写真を集めて、同社の主力商品のメガネ120種類をそれぞれに疑似試着させた画像を作成し、合計6万枚の画像を用意した。次に、同社の店頭スタッフ2800人と本社スタッフ200人の合計3000人が、1人平均20枚に対して4段階で似合う度合いを評価していった。こうして各画像に社員1人の評価を付けた。

 メガネを掛けた人の画像6万枚とそれぞれに対する専門的な知見を持つ社員の評価のセットを教師データに深層学習をして、独自の画像評価システムをJINS BRAINとして開発した。

 利用者はJINS BRAINのサイトからパソコンやスマートフォンで顔写真を登録し、画像認識された両目と鼻の位置を確認、調整した後に、メガネを試着する。すると似合うかどうかが最大100%のスコアで判定される。画面上に表示されたメガネを次々と疑似試着できる。また、男性からのスコア、女性からのスコアを見ることもできる。

JINS BRAINはメガネを擬似的に試着し、似合っているかを最大100%のスコアで判定する
JINS BRAINはメガネを擬似的に試着し、似合っているかを最大100%のスコアで判定する

店頭接客の知見を機械学習

 「顧客アンケートでは『似合うメガネが分からない』という回答が45%に達する。フェイス・トゥ・フェイスの接客ができないEC(電子商取引)サイトでは前から課題意識を持っていた。日本で一番接客している我々のナレッジを機械学習させれば、良いサービスができるのではないかと考えた」

 企画・開発を担当したデジタルコミュニケーション室マネジャーの向殿文雄氏はこう話す。

 ECサイトの一般的なレコメンドは、閲覧する商品や購買する商品の相関関係に基づくものであり、購入する人に似合うかどうかは別問題だ。メガネは丸顔、面長顔など顔の輪郭ごとに似合うフレームがあり、店頭ではこの専門知識に基づいて接客をする。

 JINS BRAINではこのマニュアルを単にルール化することはしなかった。社員に判断させることで、表情、顔色、髪型や髪色などマニュアル化されていない情報も考慮する店頭接客の知見をAI化した。

利用は過去の10倍規模に

 反響は上々だ。JINSはこれまでも疑似試着サービスは提供してきたが、AIで似合うかを判定する話題性や、従来のアプリ型ではなくダウンロード不要のウェブサービスにしたことで、利用は「過去の試着サービスの10倍に達している」(向殿氏)。さらにJINS BRAIN利用者に商品購入額を1割引するキャンペーンを実施したところ、通常のキャンペーンより反応が高いという。

 開発期間は半年間。当初からAIの話題性を踏まえて2016年中のサービス開始を目指した。判定品質を高めたい一方で開発スピードとのバランスを考慮して、社員による画像評価は1画像1回(1人)にとどめた。

 当初はスコアが一定の範囲内に集中したため、利用者が似合うメガネを判断しやすいようにスコアを分散させるようチューニングした。また、マニュアルを読まなくても直感的に利用できるようにインターフェースを工夫した。

 今後は、さらなる学習で精度向上を目指しつつ、著名人の好みをAI化したJINS BRAINの提供や、好みが日本と全く異なる海外店舗での活用などにより、店頭集客の支援強化へ結びつけることを目指す。ユーザーから登録した画像を利用した学習も検討している。「使用にあたってはオプトイン(許諾)を取る」(向殿氏)。

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