農業IoT(Internet of Things)クラウド事業を展開するデザミス(東京都江東区)は10月、牛のリアルタイム管理サービス「U-motion」の提供を開始した。1頭当たり月額500円の料金で「来年2月には数万頭に導入される見込み」(清家浩二・代表取締役兼CEO)と一気に顧客を拡大させる。

 U-motionは、加速度センサーと気圧センサーを備えた名刺大の端末を牛の首に取り付けて動きのデータを収集し、「採食」「飲水」「歩く」「横臥」「走る」「静止」「発情」「反芻」の8つの動きを検知する。高低で値が変わる気圧センサーからは、牛が立っているのか、横臥しているのかが判断できる。

 食べる時間や回数が過去平均と比べて少ないなど、通常とは異なる行動をしている牛がいる場合は個別にアラートを出して、畜産農家の従業員が対応できるようにする。こうして繁殖の機会損失、疾病、事故などを防ぐ。

 発情期を検知するようなセンサーは既に市場に存在するが「食べる、飲むを検知できるのは世界でも初めてではないか」(清家CEO)と言う。餌槽、水槽にアンテナを設置することで位置情報も把握することにより、採食回数・時間、飲水回数・時間の行動を見分ける。位置情報の把握にはBLE(Bluetooth Low Energy)方式のビーコンを利用する。なお、端末のバッテリーは3年保証となる。

乳牛1頭9万円の収入に対して500円

 清家CEOはデザミス起業前、パナソニックで農業関連事業の責任者をしていた。その知見を生かしてサービスを企画・開発した。提供前には、静岡県、栃木県、大分県の牧場で実証実験を実施して、センサーから得られるデータと牛の8つの動きの関係性を実証した。

 料金は牛1頭当たり月額500円で、端末費用、初期費用などは不要。負担できる金額を農家にヒアリングして決めたという。農家の投資対効果の視点で考えると、牛1頭が1日30リットルの牛乳を生産し、1リットル100円の売価だと1カ月で約9万円の収入となる。畜産農家にとっては、月額500円で9万円の収入を安定的に確保できるようになれば、大きな負担感はないという。

 「労力の削減、スキルの平準化、データ管理による経営ロスの防止を期待できる」(清家CEO)ことも導入のメリットとして挙げられる。

U-motionの仕組み
U-motionの仕組み

データビジネスも見込む

 販売にあたっては、複数の大手飼料メーカーと業務提携して、全国に6万戸以上ある牛の畜産農家へ売り込んでいく。3年後には売上高50億円を見込む。

 目標達成に向けては、肉用牛、鶏、豚へのサービスの横展開に加えて、データビジネスも見込む。

 U-motionではセールスフォース・ドットコムのクラウド上に、牛のデータだけでなく、牛舎の温度や湿度、電気や水道の使用量、農家が管理する病気や飼料の情報なども登録可能にする。

 こうして集約したビッグデータを分析し、例えば病気になる牛にはそれまでの採食などでどんな傾向があるのか、高価な飼料を与えると売り上げに効果があるのかといったことを検証可能にする。畜産農家だけでなく、飼料メーカーなど関連業界へのデータ提供を見込む。ただ、実現へ向けては「分析できる人材の確保が課題になる」(清家CEO)。

 清家CEOは、「世の中のIT農業は野菜に注目されがちだが、畜産は収益が高く非常にいいビジネスモデルだ。IoTで農業革命を起こしたい」と意気込む。

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