みずほ銀行は、EBM(イベント・ベースド・マーケティング)システムと行内データを活用し、個人顧客向けマーケティングの高度化に取り組んでいる。顧客属性と取引状況などを分析して「イベント」を検知し、適切な商品情報を、最も必要としているタイミングで、最適なコミュニケーションチャネルで提供。新たな個人顧客の獲得や取引種類の増加で、収益の拡大を目指す。

 金融機関の「イベント」とは、「退職金が入金された」「自動車を購入した」「結婚でお金の使い方が変わる」など、通常とは異なる金融消費行動とその変化を指す。

 金融機関の個人部門では、1割の特定顧客が9割の利益を生み出している。みずほ銀行個人マーケティング部データベースマーケティングチーム参事役の吉澤陽子氏は、「収益増強を図るためには、9割のマス顧客の中から潜在的な優良顧客とそのイベントを見つけ出し、個人・世帯単位のコミュニケーションをとることが必要」と語る。

 優良顧客を見つけ出すには、口座取引情報やコンタクト履歴、属性情報、トランザクションログといった銀行が所有するデータと、行動分析、顧客タイプ分類、スコアリングといった外部要因を組み合わせて分析。結婚、子どもの誕生・進学、退職などのライフイベントや、財政状態などを予測し、新たなイベントの兆候を把握する。

 そのためには、顧客プロファイリングの高度化が不可欠だが、銀行が把握できる個人顧客のライフイベント情報は限られている。さらに、個人顧客向けの金融商品は、顧客ニーズが顕在化する機会が少なく、その期間も限定的だ。

 吉澤氏は、「口座の出入金データは結果データであり、なぜそのお金が必要になったのか、何に利用されるのかは推測するしかない。EBMではお客様の視点で行動パターンを考えて仮説を導き出し、出金場所/資金量などから背景となるライフイベントを推測する。そして、家族構成なども考慮して顧客プロファイリングを作成し、コミュニケーションしていく」と語る。

 例えば、大学の入学金などの多額の振込資金は、振込直前に銀行のATM(現金自動預払機)で現金を引き出し、そのまま窓口で振り込むケースが多い。支払いログと振込ログを時間と金額で突き合わせ、ATMで多額の現金を引き出した顧客と、その直後に入学金を振り込んだ顧客がいた場合、振込の名義は異なっても名字が同じであれば、親子であると判断。支払い口座の顧客に対して、教育ローン融資の案内を提供するといった具合だ。

 この仮説に基づいてEBMを行った結果、1年間で2万件の対象顧客にアプローチできたという。EBMの基盤には米テラデータのデータベースとCRM(顧客関係管理)のシステムを採用した。なお、現在の個人プロファイルの捕捉率は3割程度だが、外部統計データなどを使って分析の精度を向上させ、将来的には9割の捕捉率を目指すとしている。

レコメンド効果は最大3.5倍に

 EBMの取り組みでもう1つ注力しているのが、顧客接点の拡大と、接点情報の一元管理である。

 みずほ銀行では実店舗やコールセンターのほか、電子メール、LINEなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、Webサイト、インターネット・バンキングといった複数の非対面チャネルを持つ。同行では、これらすべてのチャネルから収集した顧客情報を一元管理して、顧客と取引に至るまでの流れを整理したカスタマージャーニーをデータベース化。コンタクトするチャネルの優先順位やタイミングをシステムで判定する環境を構築した。

 現在は、レコマンドに対する顧客の反応を検証しながら、PDCAを回している。その効果は「検証と改善の連続」(吉澤氏)だが、潜在顧客にヒットしたかどうかを示す「コミュニケーション効果」は、前年度比1.6~3.5倍の実績を上げているとのことだ(2014年度実績)。

顧客接点情報を一元化して分析し、最適な商品、コンタクトチャネル、アプローチのタイミングを探し出す
顧客接点情報を一元化して分析し、最適な商品、コンタクトチャネル、アプローチのタイミングを探し出す
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