不動産情報サイト「HOME'S」を運営するネクストは、マンションの参考価格を地図上で見られるサービス「HOME'Sプライスマップ」ベータ版の提供開始から1年がたち、推定精度の向上に力を入れている。今後は利用頻度を高める仕組みも取り入れて、同社の売却査定サービスの集客の柱として育てていく方針だ。
プライスマップは首都圏、関西圏の約25万棟224万部屋のマンション価格を推定できる。環境条件の違いから住宅価格を推定する「ヘドニック法」という一般的な手法で価格を推定。駅からの徒歩時間、都心までのアクセス、築年数や面積などの条件から算出している。
利用者はサイトの地図上でマンションを指定し、物件の階数と面積を入力すると「9151万円~1億1569万円」のように幅を持って「参考価格」が示される。

8割は範囲内も不十分と判断
精度検証のために、直近のHOME'S掲載価格と参考価格を比較すると、8割以上は範囲内に収まるという。ただ、HOME'S事業本部事業統括部ストック開発ユニットの花多山和志ユニット長は、「まだまだ足りていない」とその精度に満足していない。「幅を持たせているのであれば、その中に収めないと家を売りたい人が参考情報としては使えない。2割の人はそうした状況なので、幅を持たせる以上は安心して使える状態にしたい」(花多山氏)。
そこで現在取り組んでいるのが、価格推定のロジックを作る上での「データの母集団をどう作るか」(花多山氏)だ。現在は山手線などの路線別に物件情報を一つのグループにまとめて、価格を推定するデータの母集団を作っている。
しかし、「京浜東北線でも埼玉県、東京都、神奈川県と複数の都県をまたぐと価格の傾向が違う」(花多山氏)ことが分かった。そのため、「同じ市場構造を持つエリアを探り、母集団を作って精度を高めようとしている。10月に検証できる段階になった」(同氏)。
狭いエリアにすれば傾向は似通う一方で、データ件数が少なくなると、たまたま相場を大きく外れた価格の物件があると大きな影響を受けてしまう。最後は手作業でチューニングを繰り返して精度を高めていく考えだ。
購入側の意欲も可視化へ
プライスマップの事業上のゴールは、同社の売却査定サービスへの送客だ。参考価格の表示画面からワンクリックで査定先の会社を選択できる画面へ飛ぶ。ここで売り上げを立てる。家計簿アプリ「マネーフォワード」に価格情報を提供しており、同アプリ経由でも売却査定サービスへ誘導する。
ただ、情報は1カ月ごとに更新しているものの、参考価格は小刻みに変わるものではない。ユーザーは一度価格を調べると、しばらくは利用しないと想定される。花多山氏も、「プライスマップを契機に売却の活動に踏み込む人は少しずつ増えているが、まだ多くはない」と認める。
今後は、HOME'Sのサイト利用データなどから物件を求める需要の変化も可視化して、繰り返し利用したくなるサービスに変えていく。また情報量が少ない地域でも推定精度を確保できるか検証の上、来年3月までには福岡、名古屋地域にも対応して利用者の拡大を目指す。