米国空軍(United States Air Force)は、同軍が所有する車両の維持コスト削減と、保守・購入サイクルの適正化を目的に、センサーデータを活用している。2012年より、すべての車両に順次センサーを取り付け、データを収集・分析。エンジンの稼働状況や燃料消費などから故障の予兆を把握して事前にメンテナンスをしたり、稼働率が低い車両を他の基地へ再配備したりするなどの施策を講じている。

 米国空軍は、11の司令官直属部隊(メジャーコマンド)と307の基地を有する。管理する車両は、ピックアップトラックやワゴンなどの一般車両から、トラッククレーンやフォークリフトといった特殊車両まで500種類、約9万台と幅広い。

 収集するデータは、エンジンの燃焼圧力、アイドル時間、最高速度、燃料消費、オイルレベルなど26種類。2015年10月時点で、センサーを搭載した車両は、一般車両を中心に全体の約20%だが、2020年までには全車両にセンサーを搭載する予定であるという。

米国空軍が所有する車両は、約9万台/500種類。その資産価値70億ドル以上だという(米テラデータのイベント「Teradata 2015 PARTNERS」での講演より)
米国空軍が所有する車両は、約9万台、500種類。その資産価値は70億ドル以上だという(米テラデータのイベント「Teradata 2015 PARTNERS」での講演より)

 稼働状況の管理では、車種ごとにしきい値を設定し、一定の値を超えたら警告を出すなどの施策を行っている。例えば、一定時間以上のアイドリングがあった場合には、警告を出すといった具合だ。

 また、エンジンの燃焼圧力と燃料消費との関係を分析し、メンテナンスが必要な車両に対しては、中央の管理部門から車両管理部隊に連絡する体制を整えた。特に、1台あたりの価格が高い特殊車両については、故障前にメンテナンスできるコストメリットは大きいという。

 米国空軍車両管理マネージャーのロバート・ユーレン氏は、「複数車両から稼働状況のデータを取得、分析することで、コスト効率の観点から、いつ、どの時点でメンテナンスをすべきなのか、または買い替えたらよいのかを事前に判断できるようになり、予算立案がスムーズになった」と語る。

 車両の適正配置では、使用頻度の低い車両の洗い出しだけでなく、どの任務に、どの車両を利用すればコスト効率が良いのかまでを把握できるようになったという。例えば、アリゾナ州の基地で荷物運搬車両が500台程度必要になった場合、近隣のどの基地から、どの種類の車両を調達するのが、いちばん燃料費用の効率が良いのかをデータから読み取れるようになった。

 なお、センサーデータ活用による具体的なコスト効果検証はこれからだが、「(センサー搭載車の)故障件数が減っている実感はある」(ユーレン氏)と手応えを語る。

直近3年間で3億900万ドルのコスト削減に成功

 実は、空軍が車両管理においてデータ分析を生かし始めたのは2001年のこと。今回のセンサーデータ活用も、「2001年に開始したデータによる車両管理プロジェクトの一環」(ユーレン氏)である。

 当初は、基地単位で所有する車両のデータを管理していたため、データが“サイロ化”。空軍全体の車両情報はだれも把握できなかった。この課題を解決すべく、各基地の車両データを米テラデータの「エンタープライズ・データウェアハウス(EDW)」に集約して一元管理し、どこの基地からでもすべての車両に関する一般情報(購入年度、修理回数、管理基地名など)にアクセスできるようにした。

 次に、今まで個別にしていた車両購入やメンテナンスの申請をルール化し、専用のWebアプリを通じて隊員自身が申請できる環境を構築した。また、車両の一般情報を管理する専用のWebアプリも開発し、現場での手入力によるデータ変更をほぼ不可能にした。その結果、データ品質の向上につながった。

 車両情報の一元管理によるコスト削減は、「データ管理に費やす作業時間の大幅短縮も含め、期待以上だった」(ユーレン氏)。修理回数とそのコストから車両種ごとのライフサイクルグラフを作成してメンテナンスと購入の適正化を図ったり、新規車両購入の申請を見直したりしたところ、直近3年間で3億900万ドル(約380億円)のコスト削減に成功したという。

 今後は、データ活用の効果をより詳細に検証し、一定の効果が証明できた場合には、「『一般車両管理のベストプラクティス』として展開したい」(ユーレン氏)とのことだ。

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