補聴器でもIoTの活用が進み始めた。Nessa Japan(東京都品川区)は、利用者がスマートフォンやタブレットで、音質などの設定を変更できる補聴器を提供し、今年から日本市場での事業を本格化している。

 Nessaはシンガポールに本拠を置き、補聴器メーカーであるデンマークのジーエヌリサウンドから装置を調達し、独自開発のアプリや独自のサポートサービスとともに提供している。

 日本市場には昨年5月に参入した。Nessa Japanの中嶋克彦ゼネラルマネージャーは「日本では本来は補聴器が必要と考えられる方が、利用していないケースが多い。欧米では約8割が利用しているのに対して、日本では10数パーセントであるという調査もある。そうした層にも利用してもらい、生活の質を上げていただきたい」と言う。

専門家と遠隔対話で調整

 Nessaの特徴は補聴器を自分好みに調整できることだ。購入した利用者に対して、専用アプリをインストールしたスマホを貸与し、Nessa側の補聴器の専門家と相談しながら、音声帯域ごとのレベルを調整することができる。「顧客によって異なるが、2カ月程度かけて調整していくことで、満足できる使いやすい状態になる」(中嶋ゼネラルマネージャー)。

Nessaの販売する補聴器と各種アプリ
Nessaの販売する補聴器と各種アプリ

 一方、細かな調整も一般アプリで可能である。また、機種によって異なるが「レストラン」「ミュージック」「屋外」「電話」「パーティ」「交通雑音」といった様々なモードを変えたり、それぞれの帯域でのレベルを微調整できる。

 開発元であるジーエヌリサウンドは米アップルと連携しており、スマホのiPhoneとBluetoothで接続できる機種も用意した。通話やビデオなどの音声データを補聴器に直接送ることで、いい音質で聞くことができるという。

 補聴器の接続状況などもスマホで管理できる。補聴器を紛失した場合、アプリで探すモードにすることで、落とした場所の近くに来た際にアラートを出して検知するといったことも可能だ。

 成熟した市場とも言える補聴器だが、Nessaのように自社のアプリと専門家などのサービスを組み合わせることで新たな需要が開拓できる可能性がある。

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