電力変換装置などを手掛ける東芝三菱電機産業システム(TMEIC)は、生産ラインを改善し、IoTに対応した工具を活用することなどで、1つの部品を生産するのに必要な時間を4割削減した。ポンプやボイラーなどで利用される電力変換装置を生産しており、府中事業所(東京都府中市)で今年3月に本格的に稼働し、神戸事業所(兵庫県神戸市)にも導入する計画だ。
IoT工具はメーカー製のものを調達し、それを新たに導入したデジタルセル生産システムと連係させている。電力変換装置の生産ラインを従来の流れ作業から1人でほぼすべての作業をこなすセル生産に移行させ、ディスプレーに作業の手順を表示している。
従来は1人が3~4つの作業を担当していたが、セル生産で69まで増えることになり、それをIoTなどで支援することにしたのだ。
ここでは指定されたドライバーやレンチにだけに電源が入り、指定された回数ネジの締め付けなどの作業をして初めて、次の工程に進むことができるようになっている。

展示会で情報を得てから検討に乗り出して、昨年の春に本格的な取り組みを始めた。「生産性向上はもちろんだが、それぞれの作業の時間を計ったり、ミスを撲滅するため締め付けしたかどうかもデジタルで情報を残したい」(TMEICパワーエレクトロニクスシステム事業部ドライブシステム部宮崎聖部長)との思いがあった。
実際、今回のシステムを導入してから約9万5000本のネジやボルトを締めたが、不良は1本もないという。
習熟に2週間かかっていたが2日に
IoT工具や支援システムのおかげで、新たに生産ラインに従事する担当者もすぐに習熟できるようになった。「いままで2週間程度かかっていたのが、2日目の3台目の生産から他の担当者と同様に作業ができるようになった」(パワーエレクトロニクスシステム事業部 ドライブシステム部 製造第一課加藤利和課長)。
実際に成果がでるまでには試行錯誤の連続だった。
例えば、作業員の動きをビーコンやスマートフォンを利用して取得し、ヒートマップで分析してみたところ、作業員が想定よりも広範囲を動き回っていることがデータで把握できた。
裏側の締め付けなどの作業をする際に組み立て中の装置の方向を変える必要があるが、重量があるために他の作業員を呼んで手伝ってもらっていたのだ。そこで装置を昇降したり回転させたりできる専用の作業台を導入。位置や姿勢を極力変えずに、1人で作業を継続できるようにした。
このほか一連の組み立て作業をより細分化したうえで、分かりにくい作業やノウハウについて情報を集約し共有している。