農業ベンチャーのベジタリア(東京都渋谷区)、新潟市、NTTドコモ、ドローン開発や関連サービスを手掛けるエアロセンス(東京都文京区)の4者は本日10月31日、ドローンを活用して海岸保安林の枯れた松の木をピンポイントで探査する実証実験を新潟市で始める。
これまで被害木の伐倒駆除については、被害状況を目視で確認して作業をしてきた。そのために効率が悪く、多額の調査費用がかかっていた。この「海岸保安林プロジェクト」は、国家戦略特区である新潟市で、海岸保安林の松枯れ対策や維持管理の手法開発を目的に、ドローンを活用し、伐倒駆除の効率化と松枯れ被害の防止に取り組むもの。
林野庁の「平成27年度森林病害虫被害量」によれば、同年度には北海道を除く46都府県で松くい虫被害が発生。全国の松くい虫被害量は約48万1000立方メートルにのぼる。
そこで今回、新潟市の要請を受けて、ドローンに搭載したカメラからの空撮画像の分析結果とGPS(全地球測位システム)による位置情報を用いて、より的確に被害木をピンポイントで特定する実証実験に取り組むことになった。

ベジタリアの技術アドバイザーであり、本プロジェクトに対して助言を行っている、国立研究開発法人森林総合研究所国際連携・気候変動研究拠点の中北理・研究専門員は実証実験のポイントをこう語る。
「本来なら航空機を用いた空中撮影を行うところだが、多額の費用がかかる。そこでより安価で手軽な方法としてドローンの活用に挑戦する。低高度の上空から撮影した画像を重ね合わせて(オーバーラップして)立体視による解析を行い、被害木の高さを計測する」
ドローン撮影と画像解析で費用減
つまり、これまで人手で行っていた被害木の分布位置や樹高、幹の太さの調査が、ドローンによる簡易撮影で行えるので大幅なコスト低減になると期待されているのだ。
実証実験の結果、ドローンを用いる場合の撮影方法や解析方法が明らかになることによって、被害木の実態が速やかに把握できるようになる。得られた知見は翌春までに行う伐採・処理作業やドローンを使うピンポイントの薬剤散布など、より効果的な防除対策につながると期待されている。
なお、4者の役割分担は以下のようになる。新潟市は、同市における海岸保安林のフィールドを提供し、プロジェクトに必要な規制緩和について国に提案する。
NTTドコモは、ドローンが撮影した画像を分析して枯れた松をピックアップしてベジタリアの植物医師に渡す。ベジタリアは、植物医師がその画像を診断する。
エアロセンスは、海岸保安林プロジェクトにおけるドローン機器およびカメラの提供、機器操作を行う。さらに、空中からの画像撮影、撮影画像の提供を行う。
なお、エアロセンスには、ソニー(50.005%)とZMP(東京都文京区、49.995%)の2社が出資している。